エディー・ジョーンズ元ラグビー日本代表監督。2019年大会ではイングランド代表を準優勝に導き、23年からは出身国オーストラリアの代表監督を務める(写真/Miho Watanabe、協力/オーストラリア大使館)
この記事の写真をすべて見る

 史上初のベスト8入りで日本中を熱狂の渦に巻き込んだラグビーW杯日本大会から4年。日本時間9日に開幕したフランス大会初戦で、日本はチリ代表と対戦、6トライを決めて42-12で勝利し、勝ち点5を獲得する好スタートを切った。優勝を狙うブレイブ・ブロッサムズの展望を、日本ラグビーを内側から知るエディー・ジョーンズ元代表監督、リーグワン得点王のバーナード・フォーリーに聞きながら分析する。AERA 2023年9月18日号より。

【写真】蜷川実花が撮った!AERAの表紙を飾ったラグビー元日本代表の五郎丸歩さんはこちら

*  *  *

 予選にあたるプールステージでは前回準優勝のイングランド、3位入賞の経験を持つアルゼンチン、7月に惜敗したサモア、チリの4カ国と対戦する。各国の力関係はイングランドとアルゼンチンが先行し、日本とサモアが追いかける立場だ。

 15年と19年のW杯にオーストラリア代表として出場したバーナード・フォーリーは、「日本は前回のW杯でベスト8入りした。誰も日本を見下していない」と言う。20年からクボタスピアーズ船橋・東京ベイに所属する彼は、対戦相手の視点に立って日本にアドバイスを送る。

「日本はとても速くプレーするから、相手はスローテンポな試合に持ち込もうとするはず。重量のあるフォワード(FW)陣が、プレッシャーをかけてくるだろう。セットプレーも大事になると思う」

ともに帝京大出身で2大会連続出場の姫野和樹(右)と流大。姫野は主将、流は副主将を務める。31歳の流は、今回が最後のW杯と位置づけ、「先発でも途中出場でもチームに求められることをやれる自信はあります」と語る。写真はニュージーランドのオールブラックス・フィフティーン戦(7月15日)(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

 日本の素早い展開を阻むために、対戦相手は身体と身体をぶつけ合う接点の攻防へ持ち込み、激しいプレッシャーをかけてくることが予想される。そこで、相手より速く接点に集結し、ボールを動かすテンポを上げていくのだ。バックス(BK)陣の決定力を引き出すためにも、FW陣の頑張りがカギを握る。FWとBKをつなぐスクラムハーフの流と齋藤直人のゲームメイクにも注目だ。

 セットプレーもポイントになる。W杯前最後のテストマッチとなった8月26日のイタリア戦では、開始早々のマイボールラインアウトを保持できず、その流れから先制トライを喫した。一方で日本のこの試合最初のトライは、ラインアウトからのサインプレーで決めている。

 ラインアウトのキーマンは、ワーナー・ディアンズだ。チーム最長身の201センチを誇る21歳は、ケガで直前のテストマッチを欠場した。「自分の身長を生かして、空中戦は勝てるようにしたい」と話す彼が戦列に復帰すれば、ラインアウトのボール保持率は高まる。

次のページ