ロストフ州のロシア軍南部軍管区司令部で、弾薬不足の解消などを訴えるプリゴジン氏=6月24日、テレグラムチャンネル「プリゴジン・ChVKワグネル」より
この記事の写真をすべて見る

こんな「弱気」なプーチン大統領はあまり見たことがない――。ロシアの民間軍事会社「ワグネル」創設者のエフゲニー・プリゴジン氏が自家用機の墜落で死んだ直後、ロシアの国営テレビに出演したプーチン氏はいつもの落ち着きがなかった。プリゴジン氏とは30年来の付き合い。ウクライナ侵略戦争の一翼を担った、この「盟友」をめぐっては、「暗殺された」との情報も飛び交う。真相を知るはずの大統領は何を思うのか。

【写真】落ち着きのないプーチン氏の様子。不安の表れか、それとも…

*  *  *
「亡くなった全員の家族に心からお悔やみ申し上げます」

 プーチン大統領は国営テレビの放送で、こう切り出した(8月24日)。その前日、プリゴジン氏ら10人を乗せた航空機が墜落して全員が死亡していた。航空機に爆弾が仕掛けられていたとも言われ、米国ホワイトハウスもクレムリン(ロシア大統領府)の関与を示唆している。

 プーチン氏は番組でさらにワグネルが、ウクライナ東部の激戦地バフムトを「奪取」したことをめぐり言及。「貴重な貢献をした。そのことは忘れない」と述べた。そしてワグネルの創設者プリゴジン氏との思い出を語り始めた。

「プリゴジンとは古い付き合いです。(知り合ったのは)1990年代はじめでした。彼は複雑な人生をたどった人で、深刻な誤りも犯した。しかし、自らのため、また我々の共同の事業のため、多くを成し遂げた、才能あるビジネスマンでした。特にアフリカで石油・ガス・貴金属で成果をあげた」

弔意を述べながら、机の上の書類に手をやるプーチン大統領=ロシア国営テレビより

 プーチン氏はこう語りながら、視線をしばしば下へ落とし、両手を机の上でせわしなく動かす。さらに机上の書類を数センチ、横へずらした。「盟友」を悼むというより、考え事をしながら話している様子だ。何を思っていたのか。

次のページ
刑務所を回ってリクルート