「プリゴジンのどこが好きなのか」
レバダ・センターは支持者を対象にこうも尋ねた。最も多かった回答は「真実を語り、まっすぐで、隠し事をしない、誠実なところ」で、回答者の27%を占めた。一方で「バフムトを奪取したこと」は12%にすぎなかった。
プリゴジン氏は反乱を、「ロシア人の血を流したくない」と述べて、わずか2日間で取りやめた(6月23、24日)。占領した西部の都市ロストフナダヌーから撤退しようとするプリゴジン氏らの車両に市民が近づき、プリゴジン氏やその部下と自撮りする姿がSNSにアップされた。 プーチン政権発足後、最大の危機が撤退によって表向き収まったわけだが、その直後にレバダ・センターが行った世論調査に、55%のロシア市民が「ワグネルへの評価は変わらない」と答えた。
プリゴジン氏の死後、プーチン氏がテレビで見せた「ぎこちなさ」には、プーチン氏の「人格」も関係する――。ワグネルの調査報道をしてきたロシア人記者のザハロフ氏は、英国のBBCロシア語版(8月26日)でこう指摘した。
「童話で、主人公の影が一人歩きして、主人公にたてつく物語があります。プリゴジンは、プーチンの影。プーチンのエゴ(自我)の一部を体現する存在でした」
ザハロフ記者はアンデルセンの『影』を引用。主人公から分離し、独立した主人公の影が、やがて地位を築き、権力を握ろうとする物語だ。似たことが、6月~8月、プーチン氏とプリゴジン氏の間で起きたというのだ。
プーチン大統領を、多面的な「人格」や「側面」を持つ人物として描く伝記や研究書は少なくない。ザハロフ記者によると、そのうちの「暴力的人格」を引き写すように体現し、プーチン氏の政権維持に貢献したのがプリゴジン氏だったという。そうなった経緯を次のように説明する。