こうした事件へのプーチン大統領の関与をクレムリンは一貫して否定してきたが、実際にはクレムリンの関与を強く示唆する事件もあった。
プーチン氏の最大の政敵、ナワリヌイ氏への毒殺未遂事件(2020年)。ナワリヌイ氏はプーチン氏や側近の蓄財疑惑などを追及してきた反政権活動家で、国内便の機中で一時、意識不明の重体となり、ドイツの病院へ移送された。そこで、毒をもられたことが判明した。
その後の会見でプーチン氏は、余裕を見せた。笑みを浮かべ、笑い声もあげながら、「誰にそんなこと(毒殺)が必要なのか。もし、必要だったらなら、やり遂げていただろう」と否定してみせた。その直後、調査報道機関ベリングキャットが、ロシアの秘密諜報機関の人員が「毒をもった」と話す会話の録音を公開し、大統領の面子をつぶした。その録音ではクレムリン高官の実名も出た。
プリゴジン氏の航空機の墜落は単なる事故なのか。あるいは、バーンズCIA長官の「プーチンは、復讐の『使徒』」という予言が当たったのだろうか。
プーチン大統領はプリゴジン氏の反乱が起きた6月24日の演説で、市民と並び、軍、治安機関、そして秘密諜報機関に対し、「脅威から国民・国家を守ろう」と呼びかけた。
復讐の使徒という、プーチン氏のもう一つの「人格」が表面化したのではないのか。その意思を体現する人物に、プリゴジン氏が暗殺されたのだとしても、実行犯のトップに立つのが「誰か」は当分、分かりそうもない。