――へえ。子どものころから当然仕事をすると思っていたんですね。

 母が翻訳を仕事にしていて、フルタイムの会社勤めをしていたんです。働いている母を格好いいと思っていました。だから、自分も当然働く、と。父は物理の研究者で、私は一人っ子です。

 私の保育園の送り迎えは母が全部やってくれていた。今になって、本当に大変だったろうなと思います。ただ、父も結構料理を作ってくれて、私のお弁当は全部父が作りました。それに、夜は7時とか7時半とかに帰ってきて、夜ご飯を毎日一緒に食べていた。周りの友達のお父さんはもっと遅くまで働いていたので、研究者っていうのは早く帰れる仕事なんだって思っていました。ちょっと勘違いでしたけど(笑)。いや、でも一応帰ることはできるから、合っているのかな。

 女子学院で良かったのは「人と違うことは素晴らしい」っていう教育をしてもらったことです。数学好きがあまりいなかったのは残念なところですけれど、数学好きでも「変な奴」とは思われないで、「人と違って、いいね」って思われた。それはすごく感謝しています。

YouTuberなんて呼ばれることもある(笑)

――現役で東大に?

 はい、理Ⅰに入りました。数学科に進むか、物理に進むかは結構迷いました。実験があまり好きじゃなかったので、やりたいことをやってみるかっていう感じで数学にしました。女子は私1人だったので、最初のころはきつかったですね。周りと馴染めないというか。2年の後期から専門の授業が始まって、新しいことをたくさん勉強しなくちゃならない。今思うと、友達がいなかったから勉強ばかりできた。あのときの勉強は、本当に糧になっていると思います。

 学部の3年生のときに、確率論に出会って感激したんですよ。確率って日常生活でも馴染みのあるものですけど、難しい概念じゃないですか。ところが、数学だと綺麗に表現できる。確率の前に測度論っていうのがあるんです。測るっていうことをすごく抽象化したような理論で、次の学期の授業で「確率も測るという行為の一つにすぎない」と習って、すごく衝撃を受けた。確率も面積も一緒なんだって、私の人生で一番感動したところなんです。

 5年ぐらい前に東大理学部が広報のために動画を撮るっていうんで、私が一番感動した「確率は面積だ」を話したんです。これがYouTubeで配信されて、100万回以上再生してもらっている。それ以外に2本ぐらいしか出ていないんですけど、YouTuberなんて呼ばれることもある(笑)。

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私みたいなペーペーに情熱を語った