そんなおいを、朝青龍は時に厳しく、時に優しく見守り続けた。Twitter(現X)では、「こんな取り口いいのか? 勝負から逃げるバカやろ」「戦うなら殺すつもりで行け!!出来ないならちゃんこ番やれ!!」などと叱責の言葉が目立ったが、新大関を決めた豊昇龍が報告すると、涙を流して喜んでいたという。

 深い絆で結ばれた朝青龍と豊昇龍は、外見も相撲もよく似ている。顔がそっくりなのはだれもがうなずくだろうし、身長と体重の数値も近い。土俵上で見せる激しさや速さ、低さ、多彩な技などの持ち味も共通している。朝青龍が0だった技能賞を豊昇龍が2回も受賞し、内掛けや河津掛けなど、朝青龍が一度も見せなかった技をすでに披露していることなどから、技の多彩さでは、すでに互角に近いと言えるかもしれない。

 しかし、それ以外の面では朝青龍のほうが上をいっている。とりわけ違いが際立つのが「激しさ」だ。豊昇龍へ「戦うなら殺すつもりで行け!!」と叱咤するほどの激しさが、朝青龍の相撲からは確かにほとばしっていた。強くて大きな相手にもまったくひるまず、正面からぶつかって攻め立てる。不利な体勢になっても勝負を諦めない。負ければ悔しさを隠そうともしない。そんな激しさが、横綱へと駆け上がる原動力にもなった。

 豊昇龍の相撲も激しくはあるが、まだまだ叔父さんには及ばない。とりわけそう感じるのが横綱戦だ。豊昇龍はこれまで横綱に6戦全敗。相手はいずれも照ノ富士だ。まわしをつかんで投げたり外掛けにいったり、揺さぶって善戦したことはあるが、ほとんどの場合は横綱にガッチリとつかまえられ、なすすべなく敗れている。

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横綱・照ノ富士を相手にどう戦うか