今回の鑑定でネックとなるのは、瑠奈容疑者の父親の修容疑者が、元精神科医ということだ。榊原院長は、「地元の権威である北海道大学の医師が担当するはず」と推察するが、それでも同じ精神科医だけに手の内がわかってしまい、正確な鑑定ができなくなる恐れはないのだろうか。
「もし修容疑者に精神鑑定の専門知識があれば、『今の質問はこれを確認しようとしているな』とか、逆に『なんでこの質問を聞いてこないんだ』と思われてしまい、鑑定医もやりづらいでしょうが、一般の精神科医であればそこまでは分からないと思います。通常の精神科の診察は、患者の“今”の状態にアプローチしますが、鑑定の場合は“過去のある時点”にさかのぼり、当時の心の様子を再現する。同じ精神科医と言えど、鑑定医の手法はかなり特殊なのです」
しかし、精神疾患の知識が豊富だからこそ、巧みに“詐病”ができる可能性はある。だからこそ、逮捕前に勤務していた病院での仕事ぶりなど、周囲の証言が重要な意味を持つという。
さらにもうひとつ、修容疑者を鑑定するうえで注意すべき点がある。
「修容疑者は、病院では精神科科長を務めていて、疾患を患っていたとは考えづらい。この事件は、病気ではなく、親子間の人間関係の問題によって引き起こされた可能性が高いと思います。人間関係というのは、精神医学よりも心理学の領域に入ってくるので、心理士に入ってもらってサポートを受けるのではないでしょうか」
半年後、担当鑑定医はどのような結論を出すのだろうか。
(AERA dot.編集部・大谷百合絵)