2012年にSNSに「月影の騎士?」との表題で投稿した田村修容疑者の写真

 性格についても、たとえば人の気持ちが分からないサイコパス気質や、高い攻撃性などが認められれば、犯行に及んだ背景として加味できる。また、「非常に温厚」という結果が出ても、それはそれで「犯行時に性格が豹(ひょう)変した」可能性を示すことになり、何か精神疾患があったのか、それだけの強い動機があったのか、という観点で犯行の理由を探っていく。

 性格検査の代表的なツールは、ロールシャッハ試験だ。インクの染みを見せて、何に見えるか答えてもらう。

「ロールシャッハ試験は100年の歴史があり、『こういう答えをする人はこういう傾向』という経験値が積みあがっている。うたぐり深い、被害妄想の傾向がある、くよくよしやすい、などの思考パターンを判定できます。統合失調症だと、『ここに妖精がいる』というような奇妙なことを言う場合がありますね。逆に常識的なことしか言わないと、『心の奥底を隠している』と判断されることがあり、どう答えても何かしらの所見がつきます。あくまで“傾向”なので絶対に正しいとは限りませんが、参考にはします」

 疾患や知能、性格にとどまらず、面接によって「犯行当時の精神状態」を明らかにすることも鑑定医の役割だが、相手が“患者”ではなく“被告”である以上、一筋縄ではいかないケースも多い。「正直に話すことで裁判で不利になるかも」とうそをついたり、もはや何もしゃべらなかったりする人もいる。

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6カ月の鑑定留置は異例の長さ