そこで鑑定医は、面接の質問にさまざまな工夫をこらす。
「たとえば、時期をずらして同じ質問をすることがあります。前と言っていることが違ったら、本人の話のほころびに気づけます。あとは詐病を見抜くための質問もあります。公になってはまずいので詳しく話せませんが、たとえば統合失調症のふりをしていないか確認するために、『一般の人には統合失調症の症状っぽく見えるけど、実際はありえない症状』があるか尋ねて、『ある』と言われたら、詐病の可能性が高いと判断します」
では、札幌遺体切断事件ではどのような鑑定が行われるのか。逮捕された容疑者3人は、来年2月28日までの半年間、精神鑑定を受けることになっている。6カ月という鑑定期間について、榊原院長はこう分析する。
「殺人のような重大事件の場合は基本的に精神鑑定が行われますが、2〜3カ月が一般的なので、異例の長さですね。今回、娘の瑠奈容疑者は、引きこもりで社会から隔絶されていた一方、親子関係は異常なほど濃かったと報道されています。殺害に至った経緯を把握するには、家族3人の関係を含めて慎重に調べる必要があると判断されたのでしょう」
鑑定期間中は、拘置所や病院に留置され、外出の自由はない。鑑定についての専門的な知識やスキルを持つ精神科医は全国で100人ほどしかおらず、多くの医師は病院での診察業務と掛け持ちのため、鑑定が行われるのは週に1回ほどだという。