元精神科医の田村修容疑者

 札幌市・ススキノのホテルから、頭部を切断された男性(62)の遺体が見つかった事件で、田村瑠奈容疑者(29)と、父の修容疑者(59)、母の浩子容疑者(60)が殺人などの疑いで逮捕されているが、8月28日、3人の鑑定留置が始まった。しかし、修容疑者は元精神科医。精神医学のプロに対し、精神鑑定は正しく機能するのだろうか。豊富な鑑定経験を持つ、つきじ心のクリニックの榊原聡院長に見解を聞いた。

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 そもそも精神鑑定とは、何をどうやって調べるものなのか。

 これまで60件ほどの鑑定実績を持つ榊原院長によると、まず鑑定医は「被告が責任能力に関わる精神疾患を持っているか」を見極めるという。

「代表的な疾患は、統合失調症ですね。15年くらい前までは、統合失調症の診断がついた瞬間、責任能力なしと判断されました。でも今は、『幻聴や妄想に支配されたがゆえの行動だったのか』など、病気が犯行に影響を与えたのか、責任能力はあるのか、というところまで鑑定します」

 また鑑定では、疾患だけではなく、被告の知能や性格についても調べる。

 知能は、「低いかどうか」がポイントになる。一般的にIQが70以下だと知的障害とされるが、たとえば、「知能の低さによって衝動のコントロールが難しく、その結果万引きをした」と認められれば、減刑の対象となる。榊原院長によると、「裁判官はすごくIQを気にする」ため、WAIS-IIIやWAIS-IVといった標準的な知能検査を行い、知能と犯行の関連性を検討するという。

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大谷百合絵

大谷百合絵

1995年、東京都生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。朝日新聞水戸総局で記者のキャリアをスタートした後、「週刊朝日」や「AERA dot.」編集部へ。“雑食系”記者として、身のまわりの「なぜ?」を追いかける。AERA dot.ポッドキャストのMC担当。

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「裁判で不利になる」とうそをつく