13歳のガキの頃に身近にそんなすごい人たちがいたから、やっぱり受ける影響は大きいよ。あの大横綱が身近にいるんだもの。そういった環境で相撲の世界のしきたりや振る舞い方を身に着けた結果、後になって金をいろいろと使ってしまうことになるんだけど(笑)。

 プロレスのしょうもない社会で、このまま埋もれてたまるか、勝ち抜いてやると思えたのも相撲時代の修行があったからで、さらに女房と結婚して、娘が生まれて、彼女らに恥をかかせちゃいけない、俺が恥をかくのは女房と娘も恥をかくことだって胸に刻んで、貧乏でもいいからカッコよく生きようと誓ったんだ。

ここ10年でたどりついた境地

 最近、ここ10年でようやく、自分を大きく見せるのは野暮ったいなと思えるようになった。やっぱり、プロレスを引退して、娘も大きくなって、いつまでも「俺が、俺が」って言っていてもしょうがない。俺のことは周りが勝手に評価してくれ。お前がそう思うんだったら思っててくれよって。そんな境地だね。

 そう思える前は「相撲で勝ち越してプロレスに転向した天龍、なにするものぞ!」と、デカい顔して世田谷の桜新町を歩いていたもんだ。町が小さいね!(笑)。よく近所の日体大生に「デカい顔して歩いている天龍さんをよく見かけましたよ」なんて言われてたしね。

 ただデカい顔して歩くのも、小川直也がデビューしてからはしゅんとしちゃった。彼の経歴にはかなわないから(笑)。やっぱり、謙虚な気持ちは大切だね!

(構成・高橋ダイスケ)

天龍源一郎(てんりゅう・げんいちろう)/1950年、福井県生まれ。「ミスター・プロレス」の異名をとる。63年、13歳で大相撲の二所ノ関部屋入門後、天龍の四股名で16場所在位。76年10月にプロレスに転向、全日本プロレスに入団。90年に新団体SWSに移籍、92年にはWARを旗揚げ。2010年に「天龍プロジェクト」を発足。2015年11月15日、両国国技館での引退試合をもってマット生活に幕を下ろす。

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