それは俺自身が不器用だったとかっていうことだけじゃなくて、受け身だけでなく、技もパパっと返せるようにならなければいけない。返さなきゃいけない技を返せないと「なんだこいつ、プロレスを知らないな」で終わりだ。相撲でも取り直しになったとき、塩をもう一回捲くのか、真ん中にいていいのか迷っているのがいるだろう。

「それくらい知っておけ!」といまだに思うこともあるが、相撲もプロレスもそういうところを見られて「こいつは知っている、こいつは知らない」と判断されるんだ。「プロレスは相手も光らせる」といっても、それは相手にも相応のレベルが必要で、下手なやつに付き合っていたらこっちも相手もケガをしてしまう。

 相手が下手だったら、光らせるどころか、コテンパンにやっつけるしかない。そこを躊躇するとこっちまで下手だの弱いだの言われるからね。こっちが強いところだけ見せればいいだけ、それを下手に付き合うと、雪の上のウンコみたいにどんどん下に落ちていくってもんだ。

 最初に覚える技はボディスラムや首投げなんかだけど、俺がその次に初めて覚えた大技は、アメリカ修行時代、ドリー・ファンクに頼みこんで教えてもらった技がローリング・クレイドルだ。当時、この技を使うレスラーはドリーくらいなもんで、門外不出のような技だ。俺は日本に帰って「天龍、やるな!」と驚かせたい一心で覚えたくてね。ドリーもなかなかうんと言わなかったけど、どうにか教えてもらったんだ。

 で、その直伝のローリング・クレイドルだが、日本に戻った最初のシリーズで2回くらい使って、生涯で10回も使っていない。難しくて(笑)。あの技は器用なやつがやるもんで、俺のファイトスタイルじゃなかった!

人生の基本を教わったのは大鵬さん

  振り返ってみると、俺の人生の基本を教わったのは、やっぱり一番は相撲時代の二所ノ関親方と大鵬さんだ。親方からは人との付き合い方や接し方、大鵬さんを見てトップを取った人の振る舞い方、偉ぶることなく、人と接しているのを見て、やっぱり人としてこうありたいなと思った。

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