力を入れて四股を踏まないと怒られるし、土俵やアスファルトの上で四股を踏んでいると、足の親指の付け根のあたりの皮がズルっとむけて痛いんだよ……! それが水ぶくれになりぐちゃぐちゃになって、でも痛くても休むわけにいかないし、足袋を履くのは兄弟子たちから「10年早いんだよ、この野郎!」と言われる世界だ。
テーピングや絆創膏でどうにか我慢しているうちに、どんどん足の裏の皮が厚くなっていく。そうなると、稽古の途中に裸足で外に逃げ出しても平気な強い足になるわけだ(笑)。
プロレス転向後も試合前に四股
結局、四股はプロレスに転向してからも引退するまで踏んでいた。毎試合前に50回は踏んでいたよ。片足を上げて、それをもう片方で支えるから、体幹が鍛えられるんだ。さすがに今は衰えてしまって四股を踏むことはできないけど、股割りは健在。70歳を超えた今でも鼻を地面につけることができる。
俺はもともとからだが柔らかい方だったから、入門して数カ月で鼻がつくようになったけど、硬いやつはずっと硬いまま。さらに出世が早いと後ろから押す兄弟子がいなくなるから、輪島さんなんかずっと硬いままだったね。
股割りができるようになった俺を部屋の若者頭や師匠がしきりに見ていたから、これはいいことなんだなって思ったもんだよ。鍛えたら伸びるんだって含蓄があるんだと思う。実際に土俵際の残り腰とか、技の投げ合いとか、貴ノ花のように顔に土俵の土がつくまで辛抱できるとか、しぶとく残れるようになる。貴ノ花や増位山はからだが柔らかかったもんね。