「間接的な暴力だよ」

 2021年、環境省と文部科学省は「学校における熱中症対策ガイドライン作成の手引き」を初めてまとめた。

 そこには、暑さ指数31度以上の場合、「運動は原則中止」「特別の場合以外は運動を中止する。特に子どもの場合は中止すべきだ」と書かれている。

 ところが、各自治体の教育委員会はこれをもとに熱中症事故防止対策のガイドラインをつくったにもかかわらず、暑さ指数31度以上でも部活動が中止されない状況が多くの地域で続いている。

 ちなみに、筆者の中学生の息子も「この暑さのなかで部活動をやらされるのは間接的な暴力だよ」と、暗い顔でつぶやき、35度を超える気温のなか、学校へ向かった。

 なぜ、こんなことがまかり通っているのか。なぜなら、ほとんどの教育委員会や学校は「夏の大会など、特別な場合であれば、運動を続けるのはOK」という例外規定、いわば“逃げ道”を用意しているからだ。

 そのような状況のなか、今年7月28日、山形県米沢市で部活動を終えた女子中学生が熱中症とみられる症状で亡くなった。

 この事故を受け、三重県の一見勝之知事は同月31日の記者会見で、熱中症対策の強化を打ち出した。

「命の危険があるような暑さのなかでわざわざ部活動をやる必要があるのか。そのような場合は、部活動を中止するといった具体的な方法も含めて、暑さ対策の通知を学校現場に出したほうがいい」

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大会の主催者団体とも話し合い