P.g.菌、T.f.菌、Td.菌はとくに悪性度が高く、「悪玉3兄弟」ともいわれています。中でもP.g.菌は糖尿病や高血圧、動脈硬化やアルツハイマー病などに関与していることから、注目されています。

 A.a.菌は急激に進行する歯周病に関わる菌です。この菌が多いと、若い人でもひどい歯周病を発症することがあります。

 P.i.菌は女性ホルモンによって増殖する細菌です。妊娠中などに歯周病が悪化した場合に、多く見られます。

 重症の歯周病の人では、検査で基準値の数百倍もの歯周病菌が検出されることも珍しくありません。このような患者さんには歯周病菌の数を減らす目的で抗生剤を投与する治療(抗菌療法)を検討します。

 なお、細菌検査には自費診療で3万円くらいかかりますが、抗菌療法は条件を満たしていれば健康保険が使えます。

 とはいえ、いきなり細菌検査や抗菌療法を受けるのではなく、まずは歯周病治療のベースとなる、歯周基本治療をしっかり受け、よくならなかった場合に検査、治療を検討しましょう。

 将来、マイクロバイオーム研究が進めば、もっと多くの細菌や微生物のチェックができるようになると思います。その結果、歯周病の患者さんのマイクロバイオームを健康な状態に戻す治療も登場するかもしれません。まずはその日を期待して待ちたいと思います。

日本歯周病学会と日本臨床歯周病学会の公式本『続・日本人はこうして歯を失っていく』(朝日新聞出版)より
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若林健史

若林健史

若林健史(わかばやし・けんじ)。歯科医師。医療法人社団真健会(若林歯科医院、オーラルケアクリニック青山)理事長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演。AERAdot.の連載をまとめた著書『なぜ歯科の治療は1回では終わらないのか?聞くに聞けない歯医者のギモン40』が好評発売中。

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