一方、この結果は歯周病専門医であれば、誰もが納得する結果だと思われます。というのも、マイクロバイオーム研究のはるか前から、歯周病菌の研究は先行していたからです。具体的には歯周病菌には多くの種類があることや、その菌が動脈硬化や糖尿病、認知症などの全身病と深く関わっていることが明らかです。

 また、治療をしてもなかなかよくならない重症の歯周病の人の口の中からプラークを採取し、位相差顕微鏡という特殊な顕微鏡で観察すると、歯周病菌とは関係のない、他の細菌が多く見つかることもわかっています。代表的なのが、「スピロヘータ」という微生物で、細くて長い、らせん状の生き物です。これが歯周病菌の間を活発に泳いでいる姿が見られます(健康な人のプラークからスピロヘータはほとんど見つかりません)。

 歯周病では食べカスのついた歯にまずスピロヘータなど動きの活発な微生物がくっつき、そこに歯周病菌が集まってプラークを形成することが原因となっていることがわかっています。歯周病の発症には複数の微生物が関与しているといえるでしょう。

 なお、口の中にどのように細菌がすみついているのかを知る方法として、歯周病菌の数や割合を調べることのできる「細菌検査」があります。

 検査ではペーパーポイントという、細いこよりのような歯科材料を、深い歯周ポケットの中にさしこみます。この状態で30秒ほどおくと、ペーパーポイントに、唾液と一緒に細菌が吸い取られます。取り出したペーパーポイントを試験管に入れて密閉し、検査会社に出すと2週間ほどで結果が返ってきます。

 細菌検査の対象となるのは歯周病菌の中でもとくに悪質な菌として知られる「P.g.菌(Porphyromonas gingivalis)」「T.f.菌(Tannerella forsythensis)」「Td.菌(Treponema denticola)」「P.i.菌(Prevotella intermedia))「A.a.菌(Aggregatibacter actinomycetemcomitans)」の5種類です。

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悪性度が高い歯周病菌は「悪玉3兄弟」