そういう善悪も含めて、社会経験が乏しいアスリートに対して社会に貢献する経験を積む環境を整えることはとても大切です」
指導者やチームの責任は
残念ながら、他大学でもアメフト部の不祥事は続いている。昨年は同志社大の性的暴行事件、今年は慶応義塾大と明治大で未成年飲酒が発覚した。
しかし、JAFAのコンプライアンス委員である吉田さんに対して、委員会からは何の要請も来ないという。同志社大のアメフト部については再建を手助けしたが、それは日大から移籍した橋詰監督の要請によるものだった。
ただ、悪質タックル問題とは異なり、その責任を指導者やチームが負うべきなのかが今後の焦点の一つになってくると見る。
「報道によると、乾燥大麻と覚醒剤成分を含む錠剤は部員の部屋で発見されました。アメフト部専用の寮ですから、ある程度は部の責任が追及されるのは仕方ないでしょう。ただ、個人レベルの犯罪であれば、チーム全体でどこまで責任を負わなければならないのか、という話になってくると思います。指導者が学生の私生活を含めて、24時間365日管理するのは無理ですから。
ただ、薬物に関わった部員が他にいないのか、部内で薬物所持や使用を知りながら隠ぺいしていたかなど、捜査を継続するために一定期間部活動を停止する必要はあると思います」
かつて日大アメフト部の故篠竹幹夫監督は、選手と寝起きを共にしながらチームの黄金時代を築いた。
「仮に篠竹さんのような人が監督をしていれば、選手の私生活にまで目を光らせて、今回のような事件は起こらなかったかもしれません。ただ、スポーツをするために大学に来ているんだから、スポーツ以外のことに目を向ける必要はないんだ、みたいな風土もあった。それでは、社会で生きるためのライフスキルを身につける機会が失われてしまいます」
うみを出し切れるのか
一方、吉田さんが首をかしげるのは、日大の上層部の対応だ。