日本アメリカンフットボール協会(JAFA)のコンプライアンス委員を務める、追手門学院大の吉田良治・客員教授(写真・本人提供)

 乾燥大麻と覚醒剤成分を含む錠剤を所持していたとして、日本大学アメリカンフットボール部の部員(21)が警視庁に逮捕された。日大アメフト部といえば、2018年5月の試合中に危険なタックルで相手選手を負傷させたとして問題になり、チームの刷新が図られたはずだった。アメフト部の再建のために「正しい生き方」を選手たちに考えてもらうプログラムに取り組んだ専門家は「大学スポーツでは部員が4年で入れ替わる。再建プログラムが継続されていれば……」と嘆く。

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 5年前、チームの再出発のため、日大アメフト部の依頼を受けて再建に取り組んだのが、日本アメリカンフットボール協会(JAFA)のコンプライアンス委員を務める追手門学院大学の吉田良治客員教授だ。

 18年、悪質タックル問題で廃部の危機に立たされた日大アメフト部の橋詰功監督は、吉田さんに再建プログラムを求めた。それは「日々正しい生き方を実践し続ける」というもので、単なる再発防止策ではなかったという。

「半年間、プログラムを提供して、その後は選手個人がそれを継続することを期待しました。私が行ったのはプログラムを通じての問いかけであって、『正しい生き方』とは何か、それをどうやって実践につなげていくか、その答えは君の中にあると、伝えました。プログラムの効果はそれなりにあったと思います」

 再建プログラムには110人の選手とマネジャーのほか、監督、コーチ、さらにチームをサポートするOBも参加したという。

 しかし、年ごとに部の顔ぶれは入れ替わっていく。

 そして再び事件は起きてしまった。
 

 吉田さんは今回の部員の逮捕について、どう思うのか。

「当時のようなプログラムが現在まで継続して行われていれば、もしかしたら事件は起こらなかったかもしれません。そういう機会を与えてもらえなかったという意味では、かわいそうだな、と思います」

 スポーツに全てを注ぐ生活を送る学生たち。その一方で、社会性、特に犯罪に対する免疫が欠落する危険性が生じる。

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事件のたびの「再発防止」