「精神的な症状も併発している場合、多汗症の治療だけでは、効果が出ないケースもあります。その場合、精神的な症状に対しても治療することで、多汗症の症状がよくなることもあります。また、最初から多汗症と精神的な症状の両方を治療したほうがいいケースもあります。精神的な症状に対する治療は、向精神薬などを使用することもありますが、根本的な対策として自律訓練法などを指導することもあります」
自律訓練法は、手や腕の力を抜いて、手の温感などを意識して感じるようにする訓練法で、緊張や不安を和らげることが期待できます。
「多汗症の人は、緊張しやすい、不安を感じやすいといった傾向があります。多汗症の治療と同時に、自律訓練法などで精神を落ち着かせる方法を身につけておくと、緊張する場面などで役立ちます」(羽白医師)
多汗症の治療は、一般的に皮膚科で実施されますが、新しい薬が多く、すべての皮膚科で同様の治療を受けられるとは限りません。多汗症を診療しているかどうか、ホームページなどで確認してから受診することをおすすめします。
(文/中寺暁子)
愛知医科大学病院 皮膚科教授(特任) 大嶋雄一郎医師
1999年、愛知医科大学医学部医学科卒。刈谷総合病院、トヨタ記念病院などを経て現職。専門は発汗異常症。日本皮膚科学会認定専門医・指導医、日本発汗学会理事、日本ボツリヌス治療学会代議員。
愛知医科大学病院 愛知県長久手市岩作雁又1-1
はしろクリニック 院長 羽白誠医師
1986年、大阪大学医学部医学科卒。箕面市立病院、関西労災病院、大阪大学大学院医学研究科非常勤講師、国立大阪病院、大阪警察病院などを経て、2010年から現職。日本皮膚科学会認定専門医、日本心身医学会心身医療専門医、日本皮膚科心身医学会理事長。
はしろクリニック 大阪府大阪市北区梅田1-2-2-200大阪駅前第2ビル2階
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