明らかな原因がないまま6カ月以上症状が続き、次の6項目のうち2項目以上が当てはまる場合、原発性多汗症と診断され、治療の対象となります。

塗り薬やシートタイプの外用剤が保険適用に

 多汗症の治療は、症状が出ている部位によって異なります。最近は外用(塗り薬)の抗コリン薬に保険が適用されるようになり、第一に選択されるケースが増えています。わきの下の場合、2020年にゲル状の塗り薬(ソフピロニウム)、22年にシート状のタイプ(グリコピロニウム)が使用できるようになりました。さらに23年6月からは手のひらの多汗症にも、ローション状の塗り薬(オキシブチニン)が保険適用されています。

 緊張などによって汗をかくのは、交感神経の働きが活発になることで、アセチルコリンという神経伝達物質が放出され、それが汗腺(かんせん)にある受容体に結合して、発汗が促されるためだと考えられています。抗コリン薬はアセチルコリンが、汗腺の受容体と結合するのを妨げる作用があるため、発汗を抑えることが期待できます。内服の抗コリン薬も使用できますが、口渇、排尿障害、ドライアイなど全身性の副作用があり、外用薬のほうがこうした副作用を抑えられることが、明らかになっています。

 外用の抗コリン薬は、1日1回、毎日継続して使用するのが基本です。一般的に使用して1週間後くらいから効果が出始めます。わきの下の場合、ジェル状のタイプとシート状のタイプを選択できますが、どのように選ぶのでしょうか。

「多汗症の患者さんは、すでに市販の『汗ふきシート』を使用したことがある人が多いので、シート状のタイプだと使いやすいようです。ただし、シート状のタイプは薬剤が手につくので、その手で目をこすってしまうとドライアイなどの副作用が出る可能性があります。このため、使用後は必ず手を洗う必要があります。一方、ゲル状の塗り薬は付属の容器を使って塗るので、手を使わずにすむというメリットがあります。手に湿疹などがある人は、ゲル状のタイプが向いています」(大嶋医師)

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外用の抗コリン薬は、全国各地の病院で同じ薬を処方