抗コリン薬以外の塗り薬として、塩化アルミニウム製剤を使用する場合もあります。塩化アルミニウム製剤は、汗腺の穴をふさぐ作用がある塩化アルミニウムを20~50%使用したアルコール溶液、あるいは水溶液です。自費診療となり、院内で独自に調合する「院内製剤」として処方されます。
「外用の抗コリン薬が使用できなかったころは、塩化アルミニウム製剤が第一に選択されることが多かったのですが、引っ越しなどで病院を変えると全く同じ薬を処方してもらいにくいというのが難点でした。外用の抗コリン薬は、全国各地の病院で同じ薬を処方してもらえるほか、皮膚がかぶれるといった副作用も塩化アルミニウム製剤に比べて少ない傾向があります」(大嶋医師)
なお、塩化アルミニウム製剤は、市販の制汗剤にも使用されています。病院で処方してもらう場合は、症状に合わせて塩化アルミニウムの濃度を調整してもらえる場合があります。
外用剤以外の治療方法もある
わきの下の多汗症で、塗り薬に効果がない場合、または皮膚がかぶれて使用できない場合は、「ボツリヌス毒素製剤」を注射する方法もあります。重症の場合に限り、保険が適用されます。また、手のひらや足の裏の多汗症は、「水道水イオントフォレーシス」という治療も保険が適用されます。水を入れた専用の容器に手や足を入れ、弱い電気を流し、汗腺の働きを低下させる治療法です。週に1回程度通院して治療を受ける必要があります。
頭部や顔面の多汗症の場合、塗り薬は肌荒れを起こしやすいこともあり使いにくく、内服の抗コリン薬がよく使用されます。
多汗症治療(主に手掌<しゅしょう>多汗症)の最終手段としては、胸部の交感神経節を切除する「交感神経遮断術」という手術方法もあります。
多汗症がうつ傾向や不安障害を引き起こすことも
多汗症の人は、うつ傾向や不安障害など精神的な症状を併発するケースもあることが明らかになっています。人前に立ったとき、初対面の人と会ったときなどに緊張して汗が出て、さらにそのことによって、余計に人目が気になって緊張するという悪循環を起こします。こうしたことから、社会活動や対人関係に悪影響が及び、その状態が続くと、精神的な症状を発症することがあるのです。多汗症を治療すると、こうした精神的な症状も改善する場合があることもわかっています。皮膚の病気と精神疾患の関連に詳しい、はしろクリニック院長の羽白誠医師はこう話します。