松本に次ぐ評価になりそうなのが高校卒4年目の石黒佑弥(JR西日本)だ。ドラフト指名解禁となる昨年は指名がなく、今年も春先は出遅れていたが都市対抗に合わせてしっかり調子を上げてきた。本大会では初戦でパナソニックに敗れたものの、7回1/3を投げて3失点、7奪三振としっかり試合を作って見せた。常時145キロを超えるストレートは勢い十分で、変化球も一通り操ることができる。またストライク率は70%を超えており、高い制球力は社会人でも上位だ。少し慎重になって外角一辺倒の投球になっていたのは課題だが、同じ学年となる大学4年生の有力候補と比べても総合力は遜色ないだけに、今年こそはドラフト指名も期待できるだろう。

 松本、石黒以外の投手では古田島成龍、平元銀次郎、清水力斗(いずれも日本通運)、中崎響介(明治安田生命)、高島泰都、浅井佑介(いずれも王子)、稲葉虎大(JFE西日本・シティライト岡山から補強)、大畑蓮(西部ガス)などの名前が挙がる。社会人の選手はJABA(日本野球連盟)とNPBの取り決めで育成ドラフトでの指名ができず、支配下での指名となると全員もう少しアピールが欲しいところだが、平元、清水、中崎、稲葉などはプロで需要のあるリリーフタイプのパワーピッチャーだけに今後も注目は高くなりそうだ。

 野手は投手以上に有力選手が少ない印象だったが、そんな中で存在感を示したのが武田登生(パナソニック・日本新薬から補強)だ。打撃に関しては2試合でノーヒットに終わったものの、セカンドの守備では好プレーを連発。普段はショートでも高い守備力を見せているが、セカンドもしっかり守れるということをアピールできたのは大きなプラスである。パンチ力と脚力も備えており、二遊間が手薄な球団にとっては面白い存在と言えるだろう。

 目玉と見られていた度会が不発に終わり、ドラフト戦線という意味では少し寂しい印象は残ったもののそれでも持ち味を発揮した選手は決して少なくなかった。10月のドラフト会議に向けて、残りの試合でもここで挙げた選手たちが懸命のアピールを見せてくれることを期待したい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文 1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

著者プロフィールを見る
西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

西尾典文の記事一覧はこちら