横浜高校時代の度会隆輝
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 トヨタ自動車の7年ぶり2度目の優勝で幕を閉じた今年の都市対抗野球。プロ野球などと同様に声出し応援が解禁になったこともあって連日盛り上がりを見せたが、ドラフト候補を視察するスカウト陣の視線も例年通り熱いものがあった。そんな中でアピールに成功した選手は誰になるのだろうか。

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 まず今年の社会人球界で最大の目玉と言えるのが度会隆輝(ENEOS・外野手)だが、今大会は2試合で9打数1安打と力を発揮できずに大会を去った。課題となったのは左投手への対応だ。1回戦では150キロのスピードをマークした江村伊吹(バイタルネット)の前に2打席連続三振。続くトヨタ自動車との2回戦でも社会人屈指の実力を誇るサウスポーの森田駿哉(Honda鈴鹿からの補強)の前にノーヒットに終わっている。昨年の大会での大活躍で相手からのマークも厳しくなり、またチームの大会連覇へのプレッシャーもあってか全体的に力みが目立ち、持ち味のバットコントロールを発揮できなかった印象だ。

 ただ、今大会の結果で評価が下がるかというと、決してそんなことはないだろう。都市対抗前に行われたJABA四国大会、JABA九州大会、JABA北海道大会の11試合では合計17安打、2本塁打と厳しいマークの中でもしっかり結果を残しており、レベルの高い社会人でもその打撃技術は際立っている。また高校時代と比べて走塁への意識も明らかに高くなり、外野の守備力も高い。怪我などがなければ1位指名の12人に入ってくる可能性は極めて高いだろう。

 投手では松本健吾(トヨタ自動車)が最注目の選手だ。昨年秋の日本選手権ではパナソニックを相手に1安打完封と圧巻の投球を見せて大きく評価を上げた。今年は肩の違和感から出遅れ、都市対抗予選、本選の前に行われたプロアマ交流戦などでは本調子から程遠い出来だったが、今大会では復調を印象付けた。ENEOSとの2回戦で先述した森田の後を受けて3回を無失点に抑えると、準決勝のJR東日本戦でも3回を被安打1、3奪三振、無失点の好投でしっかりと試合を締めている。

 コーナーをしっかり突く制球力は見事で、ツーシーム、カットボールなどの変化球のレベルも高い。大会前は140キロ台中盤だったストレートも今大会はコンスタントに140キロ台後半をマークし、ストライクゾーンで勝負することができていた。ここからさらに調子を上げて、昨年の日本選手権くらいのピッチングを再び見せることができれば上位指名も見えてくるはずだ。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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