首脳会談へ向かうバイデン米大統領と岸田文雄首相(2023年1月13日)
首脳会談へ向かうバイデン米大統領と岸田文雄首相(2023年1月13日)

 そのためには、まずChatGPTフィーバーの話から始めなければならない。突如として現れたかに見える生成AIによる革命的な変革の予感。

 だが、米中両国は、生成A Iの進化が世界を変える鍵となり、その分野のリーダーこそが世界の覇権を握るということに早くから気づいていた。それは、科学技術や産業だけでなく、軍事も含めて全ての分野での覇権を意味する。

 それ故、中国はこの分野に集中投資して、基礎でも応用研究でもついに米国を凌駕するところまで発展させた。

 これに対して、米国が非常な危機感を抱いたのは当然だ。そこで考えついたのが、半導体製造という中国のアキレス腱を狙ってその発展を止めようという戦略だ。

 生成AIを発展させるためには高性能の最先端半導体が欠かせない。生成AIを使った様々な技術開発で中国は先端を行くが、それに使うスーパーコンピューターを作るための半導体の製造技術ではまだ数世代前の技術にしか到達していない。台湾のTSMCや韓国のサムスンの半導体に頼らざるを得ないのである。

 その弱点を狙ったのが、米国の先端半導体関連の対中国制裁だ。これは物の輸出にとどまらず、製造物の中に米国の技術が採用されていただけでも規制の対象になる。半導体そのものの他に特に半導体製造装置の規制が中国を非常に困難な状況に追い込んだ。その分野では、日本とオランダのメーカーも重要な先端装置を持っているため、米国は両国にも働きかけてその輸出を止めた。

 これにより、中国では、最先端半導体(主に10nm未満の微細加工を使った半導体など)の入手が困難になっている。そうなると超高性能のスパコンを大量に作ることはできず、生成A I分野での競争で米国に完全に逆転を許すことになる。

 これに対して、中国の対抗策は限られている。今日の製造業で欠くことのできないレアアースの生産で高いシェアを誇る中国は、その輸出規制を行って、米国などの先端産業に影響を与えることができるが、それはレアアースの代替技術の開発に拍車をかけ中期的には逆に自国へのダメージになる可能性もある。

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米国に追い込まれる中国