米国には、生成AIを使えば、レアアースに代わる新規物質の発見が非常に容易になるという計算もある。これまでの試行錯誤中心の研究開発が桁違いのスピードで生成AIによる開発に置き換わり、毎月ノーベル賞級の発明が出てくるはずだと考えているのだ。

 そうなれば、中国のレアアースも経済戦争の武器としては使えなくなる。それほどAIの威力は凄まじい。

 中国の立場から見ると、米国の規制は、中国の発展を止めるものであり、これを放置すれば、下手をすると米国に最先端分野で10年の後れをとることになりかねない。レアアースなどの武器も無効化される。さらにこれから中国は人口減少で国力のピークアウトの時期を迎える。それまでに米国を凌ぐ経済大国、そして軍事大国になるという夢は消え去ることになるのだ。

 それだけではない。米国が完全優位となり、しかも、その繁栄の基礎に台湾の半導体があるということになれば、それを自国のために使う目的で米国が本気で台湾独立を狙うことも現実味を帯びてくる。最近の米国議会の動きを見れば、そのリスクは顕在化している。

 もし、台湾独立を米国が主導することになれば、それは絶対に許されないことだが、10年後にそれを阻止しようとしても米中の国力が大きく離れる状況にあれば、それは難しいかもしれない。中国は、今のうちに台湾を統合しなければという強迫観念に駆られることになる。

 米国は、経済では中国完全封じ込めを狙いながら、軍事ではガードレールを設けて米中衝突は避けようと言っているが、これは虫の良い話だ。

 中国から見れば、半導体規制は、経済的な死を意味し、その結果は台湾独立につながると見ている。完全なレッドゾーンである。

 中国としては、軍事対立も辞さずという姿勢を強調して、米国に半導体規制を解除せよというシグナルを送ることしかできることはない。だから経済対話には応じるが、軍事では決して妥協せず、むしろ危ない事態を放置して米国を牽制することになる。

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米国の半導体規制は中国を台湾有事に駆り立てる?