中身もさることながら、改正の「スピード感」も気になるところだ。定年間近の中高年にとって、急な制度変更は「約束違反」に等しくなる。突然、退職金の手取りが減ると言われても、急なライフプランの変更はできないし、退職金で住宅ローンを完済しようと思っている人は計画自体が狂いかねない。
ある税法の専門家は、相当な年数をかけないと納得感は得られないのではと心配する。
「改正するにしても、完了するまでに10年単位の経過措置が必要になるのではないでしょうか。厚生年金の支給開始年齢が20年以上かけて60歳から65歳に引き上げられているように、ゆっくりゆっくり進めないと、うまくいくとはとても思えません」
ともあれ「退職金増税」の方針は固まった。次の注目は年末に与党が作る来年度へ向けた「税制改正大綱」になる。一気に改正の中身やタイムスケジュールまで提示できるのか、それとも……。中高年の勤め人は目が離せそうもない。(編集部・首藤由之)
※AERA 2023年7月24日号より抜粋