■辛いものを食べて熱くなったと感じるのは体の“勘違い”
つまり、夏野菜を食べて涼しくなったように感じるのは、アイスや冷たい水を飲んだときと同様で、実際に体温が下がるわけではない。だが池上氏によると、栄養学的に「体を冷やす」根拠が明確にあると言える成分がある。それは唐辛子に多く含まれるカプサイシンだ。
唐辛子料理といえば、冬の寒い日に温まろうとして食べるイメージが強い。しかし、「カプサイシンが体を温めているわけではない」と池上氏は言う。
「カプサイシンの辛味成分は、実は味覚ではなく痛覚です。つまり味ではなく、熱さや痛みにより辛さを感じているということです。カプサイシンの入った料理を食べると、体内の感覚器が刺激され、体が『熱くなった』と勘違いをして、体温を下げるために発汗して熱を放出しようとします。しかし、実際は体温が上がったわけではないので、体はクールダウンされるのです」
辛い料理を食べて汗が出るのは体温が上昇したからではなく、体の“勘違い”によるものとする説が有力なようだ。インド、東南アジアなどの暑い国や地域でスパイスの利いた辛い食べものが好まれている理由は、発汗作用により体温を下げるためだと考えられる。
ちなみに、池上氏によると栄養学で「体を温める」根拠が明確な食材は、冷え対策として有名なショウガ。生で食べるよりも加熱・乾燥したほうが効果は高いという。
■熱さ×辛さでクールダウン効果が高まる?
夏場はつい冷たいものが欲しくなるが、クールダウンにはカプサイシンか、逆に温かいものを口にしたほうが効果は見込めそうだ。
「冷たいものが急激に体内に入ると体が体温をもとに戻そうとするせいで、かえって暑く感じるでしょう。熱いものを食べたほうが、体が体温を下げようとするため、むしろ涼しく感じられます」と池上氏は話す。
食べもの、飲みものですべてが解決するわけではないが、体の恒常性を利用してうまくクールダウンするとよいかもしれない。ちなみに熱い料理のほうがより辛みを感じやすいので、辛いものが苦手な人は温度で調節しよう。