――それは的外れな批判だと感じますね。社会が求めているのはまさに分野横断的な研究であり、それができる人材でしょう。昨年出版された一般向けの本(『好きなものを食べてやせる食生活』)も、分野横断的な成果と言えますね。書き出しは、堀口さんが内閣府食品安全委員会委員として、また厚生労働省の新型コロナのクラスター対策班の班員として忙しく過ごしていた折、在宅勤務になってみるみる体重が増えたすえ、転んで両足を骨折したという漫画ストーリーです。入院生活でバランスの良い食事をしたら歩けないのに体重が減ったというところから、本題に入っていく。タイトルにもそそられました(笑)が、読み始めたらぐんぐん引き込まれました。
ありがとうございます。私を指導してくれた管理栄養士の平川あずささんがとにかく素晴らしい人なんです。どんなときも前向きな言葉で励ましてくれる。それに、漫画家の木村いこさんが、私たちの伝えたいことを上手に漫画にしてくださって。
私はずっと一人暮らしで、調理は苦手で運動嫌い。ダイエットを試みてもいつも挫折してきました。それが、平川さんが考えついた「3つの300」、1日あたり「肉・魚・卵など」300グラム、「ごはん・麺・パン」300グラム、「野菜」300グラムを守ればいいという方法を実践してみたら、無理なく続けられて、しかもちゃんとやせられた。その過程で気づいたちょっとした工夫やノウハウのいろいろを披露しながら、さらに専門家としての情報提供や分析なども加えて本にしました。
平川さんと私のチャットから生まれた本ですが、公衆衛生学の専門家からも「名著だよ」って褒められました。
――「一人暮らしのリアル」が隠すことなく描かれていて、大学教授に対するある種の固定観念を打ち破ってくれる爽快感もあります。堀口さんは政府の委員もたくさん務めてこられたんですよね。
消費者庁、経済産業省、文部科学省、環境省などの委員会で委員をしてきました。「神出鬼没」なんて言われることもあるんですが、これからは大学で教えるよりも、さまざまな分野の人たちとの共同研究に力を入れたいですね。研究をベースにした活動で社会に貢献したいと思っています。