
洋の東西を問わず人は古来、秘めたる思いを書き残してきた。栄光とスキャンダルにまみれた王室の面々とて、例外ではない。新事実はあるか。AERA 2023年7月17日号の記事を紹介する。
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イギリスでは今、二つの日記が話題になっている。エリザベス女王が昨年9月に亡くなってから、約10カ月が経つ。遺品で特に注目されているのが、日記だ。女王はほぼ毎晩、その日の出来事を日記に書き留めてきた。各国の君主や大統領、首相ばかりでなく、毎週顔を合わせるイギリスの首相についても触れているだろう。家庭内の出来事なども記されているとみられる。
チャールズ国王(74)は、女王の手紙や日記などの整理に着手した。抜擢されたのが、侍従だったポール・ワイブルー氏。身長が193センチと際立って高いことから「トール・ポール(のっぽのポール)」と呼ばれていた。目を引いたのは、2012年のロンドン・オリンピック開会式だ。映画「007」シリーズのジェームズ・ボンド役を演じたダニエル・クレイグが、バッキンガム宮殿内の執務室まで女王を迎えに来た。ワイブルー氏は女王がヘリコプターに乗り込むまで付き添っている。その忠誠心は折り紙付きだ。国王は、日記をじかに読みこむ任務に彼をあてた。一般公開すべきものと差し控えるべきものに分別する重要な役だ。
君主の日記と言えば、ビクトリア女王(在位1837-1901)が知られる。100冊を超えるノートには、大英帝国時代に君臨した君主としての威厳ある姿勢と同時に、愛情深い一面がこまやかに表現されている。
■在位70年の愛憎つづる
エリザベス女王の在位70年をつづった日記は、ビクトリア女王のそれに匹敵する歴史的価値を持つばかりでなく、家庭内のいざこざも書き込まれているとされる。チャールズ皇太子(当時)とダイアナ妃、ヘンリー王子(38)とメーガンさん(41)のスキャンダルなど、女王が苦しんだ身内の問題についても当然及ぶだろう。
すでに定年で第一線を退いたワイブルー氏は国王の要請で現在、週に2回ほど出勤する。日記の一般公開の詳細はまだ発表されていないが、その時には大きな話題を呼ぶに違いない。