日章のエース右腕・宇野弘宣は右横手からのスライダーを有効に使い、延長15回183球を完投。3対3で引き分け再試合になったが、10回以降をいずれも3者凡退に打ち取るなど、9回からの7イニングを無安打無失点に抑えた。

 冬場の徹底的な走り込みでスタミナに自信を持つ宇野は、翌日の再試合も「気を抜かず、打たせて取ることだけを考えた」と丁寧な投球に徹し、1本も安打を許さない。

 味方打線も0対0の6回無死満塁、これまでの4試合で打点ゼロだった4番・大平将史が「宇野を助けたいという一心」で執念の中犠飛を放ち、虎の子の1点をプレゼント。チームメイトの友情の一打に元気を貰った宇野は、6回以降もコーナーへの直球と縦横に鋭く変化するスライダーで凡打の山を築く。捕手・井上雄貴も要所で的確な守備位置を指示するなど、エースをよく盛り立てた。

 そして、1対0の勝利で見事ノーヒットノーランを達成。投球数は118、許した走者はエラーと四球の2人だけ。前日の7イニングと併せて16イニング連続無安打無失点という球史に残る快挙に、畑尾大輔監督も「本当にすごい奴ら。宇野を中心に集中力を切らさなかった」とナイン全員の健闘をたたえた。

 宇野は兵庫県出身とあって、甲子園への“里帰り”まであと2勝となったが、準決勝の延岡学園戦では、6安打8奪三振2失点の好投も、1対2の惜敗。「甲子園出場は後輩が必ず叶えてくれる」とバトンを託し、高校最後の夏を終えた。

 9回2死までノーヒットノーランを続けていた投手が、あと1人の場面で交代させられる珍事が起きたのが、2011年の愛知県大会1回戦、享栄vs天白だ。

 95年以来の夏の甲子園出場を狙う享栄は、先発のエース左腕・杉本力也が3四球を許しただけで、7対0とリードした9回2死まで被安打ゼロ、奪三振10の快投。ノーヒットノーランまであと1人となった。

 ところが、ここで彦坂明人監督は、なんと杉本を降板させ、右腕・加納翔吾をリリーフに送った。この時点で杉本の投球数は118。続投させても、さほど影響はないはずだった。

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監督は「迷いはなかった」