※写真はイメージです(Getty Images)
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 オンラインで出会いが始まるマッチング・アプリ。実際に会ってみれば、続けるか別れるか決断を迫られる。ことによると修羅場になるかもしれない。出会いを求めていながら、実際に会うのは怖い。若い世代にとってアプリはドラマチックな出会いの期待値も高くない代わりに、精神的ストレスや相手に傷つけられるリスクも少ない世界なのだと説くジャーナリスト・速水由紀子氏が上梓した『マッチング・アプリ症候群 婚活沼に棲む人々』(朝日新書)から一部を抜粋、再編集し、マッチング・アプリにはまった人の現状を開設する。

【図版】マッチング・アプリで結婚した人の割合はこちら

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 大手アプリに登録して半年の29歳フリーター、ミクさんは、マッチングした14人とビデオトークをしたが、結局、誰とも会っていない。モデル会社に登録するすらりとした美形な容姿ながら、人間関係に気を使いすぎてネガティヴな気分になりがちだという。

「リアルな出会いでは次に進むかどうかで、どっちかが傷つくからそれが嫌だ」という。「周りの人間関係も気まずくなるし。その点、アプリは大学のサークルのような緩い繋がりなのでフェイドアウトしてもされても気が楽なのがいい」

 他人にネガティヴな評価をされているかもしれない状況が耐えられない。実際に言われたわけでなくても「言われそう」と思っただけでバイト先を辞めたり、部屋を引っ越したりしてきた。恋愛でも自分を不安定にする要素はできるだけ減らしたいという。

「私、実は片付けられない症候群で、部屋が座る場所もないぐらい汚い。ゴミ出しも3週間ぐらい溜めちゃったりとかが普通になっていて……」

 年齢的にも結婚を意識しなければとアプリに登録したものの……。ルックスだけ見て可愛い、綺麗とチヤホヤする男性がこの部屋を見た瞬間、どこまでドン引きするか想像すると怖くてマッチングした相手とのデートを避けてしまう。

「付き合えば当然、部屋に来るし……。片付けるのも汚い部屋を見られるのも、どっちも大きなストレスになる。相手と会わないのでマッチングしても意味ないが、『いいね!』が来ると少し自分を肯定できた気がして。自分はまだ大丈夫と思える。精神安定剤です」

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