自治体が運営する公立学校には、自治体からの公費のほかに、もう一つの「財布」がある。「よりよい教育のために」と、PTAなどを通じた保護者からの「寄付」だ。しかし、学校の何を寄付で賄うか、その境界はあいまいで、さらに必要なルールを守らずに寄付を受け取っていた学校が相次いでいる。さいたま市では2021年度に約1400品目、総額約5千万円分の寄付を受け取っていたにもかかわらず、多くが市教委に報告されていなかった。同様の事例は各地で「発覚」しており、外部から見えないまま、保護者たちの私費に依存している学校がありそうだ。
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そもそも学校の備品は公費による購入が原則で、それは学校教育法で定められている。しかし、文部科学省が2012年に出した「学校関係団体が実施する事業に係る兼職兼業等の取扱い及び学校における会計処理の適正化についての留意事項等について」という通知に基づき、学校は寄付を受け取ることができる。
文科省の担当者は「学校関係団体の真の自発的な寄付であれば、それを妨げるものではない、と解釈されます」と説明する。
「真の自発的な寄付」。その言葉を、担当者は強調した。
では、どれだけの物品が「寄付」されているのか。
たとえば、さいたま市教委が明らかにした、21年度に市立小中学校・特別支援学校がPTA(「保護者と教員の会」なども含む)から寄付を受けた物品は、液晶テレビ、給食食器、草刈り機、遮光カーテンなど1437品目。総額は約4768万円にのぼる。さらに物品とは別に、プールやエアコンの清掃費用などをPTAが負担している学校もあった。
また、報道によると、18~20年度に高松市立の小中学校のほとんどで、保護者が支払うPTA会費や教育後援名目とした会費を原資として、年間計約1億円が支出されていた。