あるとき、妻からLINEで1枚の写真が送られてきた。写っていたのは、勉強中に橋本さんが使っていた椅子がカーペットに作った深い凹み。
「こんな跡が残るくらい、頑張っていたんだね」
妻のメッセージを読み、そんなところからも自分の努力の形跡を見つけてくれた優しさに、涙が出た。
「何歳でも、やりたいことには挑戦するべきです。でも、その挑戦が周囲に負担を強いることになるなら、理解を得るための努力も必要。自分ができることは最大限やる姿勢を見せれば、周囲も応援してくれます」
YouTubeで早朝勉強動画を配信後に登校し、夕方からはオンラインで医学部志望の浪人生、再受験生の指導にあたる。入学後の日々は、受験生時代以上にハードだ。
「今、興味があるのは総合診療科です。この年齢で医学部に合格した意義を示したい」
医学部1年生、ビリおじの挑戦は続く。
●橋本将昭/1976年生まれ、愛知県出身。医学部専門予備校で講師をしながら2019年夏から受験勉強を開始。22年、大阪医科薬科大学医学部に進学。
(文・木下昌子)