写真はイメージです(GettyImages)
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 現物は手元になく事業者に預けた状態で取引する「販売預託商法」。詐欺事件が繰り返されてきたことなどから法律が改正され、6月1日で施行から1年となった。しかし、この間にも太陽光発電への投資を募っていた「チェンジ・ザ・ワールド」(山形県酒田市)が今年2月に破産を申し立て、東京地裁が破産手続き開始の決定をした。負債総額約38億円、債権者は約1万2千人という。

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 2014年2月に設立されたチェンジ社の主な事業は、太陽光などの再生可能エネルギーの企画やシステム販売だった。

 2017年から「ワットストア」というホームページやアプリを開発し、「スマホで買える太陽光発電所」をキャッチフレーズに、自社で設置した太陽光発電システムにスマートフォンから数百円単位で投資ができる事業を開始した。

 本来なら高額な太陽光発電システムの権利を小口化して販売し、売電収入の中から維持管理などの手数料を引いて、投資家に支払うというものだった。

投資家への支払いは「チェンジコイン」という仮想通貨が使われ、1チェンジコインが1円相当で計算された。

 500万円を投資したという近畿地方に住む投資家のAさんは、

「スマホで簡単に投資できて、売電で得たものから投資家に還元するというアイデアと手軽さにひかれました。クリーンエネルギーで、社会貢献しているところも自己満足感があってよかった。最初はきちんと支払いもされていたのですが……」

 と話した。

 手元には、破産管財人から受け取った分厚い資料がある。当時、チェンジ社が作成していたホームページのコピーには、「1万ワットが1口で300円から投資できる」「年利7%」と大きく記されていた。

 こうした宣伝文句に加え、太陽光発電は、国による固定価格買い取り制度(FIT制度)があるため、売電収入が安定的に得られるという安心感がある。

 また、チェンジ社は東北経済産業局の「J-Startup TOHOKU」に選ばれ、環境省の「グッドライフアワード」で実行委員会特別賞を受賞している。つまり国の “お墨付き”があったことも信用につながった。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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