小中高と大分の公立校で学び、米・ハーバード大学、ジュリアード音楽院を卒業・修了したバイオリニストの廣津留すみれさん(29)。その活動は音楽だけにとどまらず、大学の教壇に立ったり、情報番組のコメンテーターを務めたりと、幅広い。「才女」のひと言では片付けられない廣津留さんに、人間関係から教育やキャリアのことまで、さまざまな悩みや疑問を投げかけていくAERA dot.連載。今回は音楽について。現役のバイオリニストとして感じる、クラシック音楽界の“いま”を教えてもらった。
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Q. ハーバード大学を卒業し、バイオリニストとして活動する廣津留さんだけでなく、「Cateen かてぃん」の名でYouTubeでも大人気の東大出身ピアニスト・角野隼斗さん、ショパン国際ピアノコンクールで2位入賞を果たしつつ実業家の顔も持つ反田恭平さんなど、音楽以外のことでも多様な活躍をする若い演奏家が登場しています。みなさん多才ですが、音楽と学業で共通するところはあるのでしょうか? また、同世代の演奏家同士で意識していることはありますか?
A. 人によるとは思いますが、楽器の練習は勉強と似ているところがあるかもしれません。効率よく練習するには、まずは曲に対する大きいビジョンを持ち、それから間違えそうなところやできないところを集中的に練習して、それから通して弾いていくというマクロとミクロ両方の視点が大事ですが、勉強も同じ方法だなと。「これができるようになりたい!」と目標を定め、迷うことなくまっしぐらに突き進んでいく過程も似ていますね。ただ、もっとも共通しているのは過程よりも「好きでやっている」気持ちのはず。弾くことも学ぶことも単純に楽しくて、やりたいことをやっているのだと思いますよ。
同じ世代の演奏家同士はライバルというよりもお互いを応援している気がします。インタビュー記事を読んで共感したり、SNSでつながっていたり。最近はYouTubeなどでいろいろな人に発信しやすくなったことで、クラシックの人はクラシックだけをやるという考えではなくて、ジャンルやカテゴリーの垣根を取っ払って音楽業界全体を盛り上げていこうという空気になっていると感じますね。演奏家になるには、音大で学んでコンクールで優勝してキャリアを積んでいくことが長らく一般的でしたが、いまはYouTubeやSNSで発信したり別事業を拡大したりして有名になっていく人たちもいます。新しいやり方が認められるようになってきたことは、業界を盛り上げていくうえでもすごくいいことだなと思いますね。