クラシックや演奏のみに限らず、幅広く活動している廣津留さん(撮影/吉松伸太郎)
クラシックや演奏のみに限らず、幅広く活動している廣津留さん(撮影/吉松伸太郎)

Q. 廣津留さんがクラシックだけではなく、バイオリンでJ-POPなどを弾くようになったのはなぜですか?

 私がちょうどニューヨークにいた頃は、ジャンルに関係なく演奏動画をSNSにアップする音楽家が増えてきた時期でした。そこで注目されて仕事につながることもあると、一部の人たちが気づき始めたのです。例えば、バイオリンを使ってコミカルなパフォーマンスをするオーストラリアの2人組YouTuber、TwoSet Violinが世界的なバイオリニストであるヒラリー・ハーンとツアーをしたり、私の友人のピアニストがYouTubeに有名バンドThe Chainsmokersのカバー曲をアップしたら本人たちからオファーが来て、彼らのステージに立って一躍有名になったり。そういう、以前では考えられなかったような組み合わせやドリームストーリーもSNSを通して実現するようになってきたタイミングでした。

 また、当時私はヨーヨー・マさん率いる音楽グループのシルクロード・アンサンブルと共演して、クラシックあり、ワールド・ミュージックあり、ジャズもありと、一つのジャンルに定義できないような彼らの音楽を知ったんです。音楽をやっていくうえでジャンルって関係ないんだなという思いが強くなりました。

 そういう影響もあって、私自身もよくJ-POPのカバー動画をアップしています。宇多田ヒカルさんの「First Love」が好きでバイオリンで弾いた動画を上げたら、それを見ていただいていたかは分かりませんが、たまたまテレビの音楽番組からこの曲を弾いてほしいという依頼をいただきました。クラシック以外のジャンルも演奏できるバイオリニストとして出演させてもらうのはうれしいですね。他番組では、YouTuberとしても活躍するピアニストのハラミちゃんと、坂本冬美さんの「夜桜お七」や山根康広さんの「Get Along Together」などをご本人とコラボする機会もありました。その際にはハラミちゃんがバイオリンのパートの入り方まで考えてピアノも弾き、曲のアレンジの土台をつくってくださったんです。表からは見えないところで演奏以外のこともさらっとやっていて、すごいなあと思いました。

 ボストンにいたときにゲームのサントラ録音をしたことがあるのですが、そのときに実感したのは、クラシックで培った技術だけじゃなくて、セッションのノリも分かる必要があるということ。また、ワールド・ミュージックだったら各地の音楽を生み出しているコンテクストを理解しないと良い演奏はできません。情報がさまざまにあふれているいま、これからの音楽家は、ジャンルに関係なくいろんなことを学んでいく必要があるでしょうし、みんなが当たり前のように多様に活動する時代になっていくだろうと思います。

構成/岩本恵美 衣装協力/BEAMS

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