そもそも、iDeCoでは60歳まで積立資金を引き出せません。利益を確定するには、スイッチングで値上がりした投資信託を売却し、「元本確保型」の商品に切り替える必要があります。
スイッチング自体の手数料は無料ですが、一部の投資信託では、売却時に信託財産留保額という解約コストが必要になることがあります。スイッチングを繰り返せば、信託財産留保額がかさんで利益が減ってしまう、長期保有の恩恵を受けにくい、といったデメリットがあることを忘れずに。
現在保有中の商品を解約せず、今後の掛け金で購入する運用商品の種類や配分割合を変更し、高リスクの投資信託を増やすことを検討する手もあります。ただし、高リスクの投資信託を増やせば、資産を変更前より減らしてしまう可能性も高まります。
バー経営(自営業)S.Tさん(34)の場合
【相談】 2年前に独立して自分の店を持ちました。自営業で老後資金も不安なので、iDeCoを始めました。運用商品は迷いましたが、せっかく自分の店を構えることができたこともあり、大きなリスクを抱えたくないので定期預金で確実に運用中。毎月の掛け金は自営業者の上限6万8000円。毎月の売り上げにはばらつきがあり、正直、掛け金を捻出するのが難しい月もあって、続けられるかは少し不安です。
【回答】 運用で失敗して元本が減るのが怖いことは理解できます。ただ、金利がほとんどつかない定期預金のみで運用していては、iDeCoのメリットが激減。老後資金を確保するには、ある程度の運用利回りは必要でしょう。
iDeCoの商品は大きく「元本確保型」と「価格変動型」の2つに分けられます。元本確保型の代表が定期預金と保険商品で、安全性が高いが大きな収益を期待できません。定期預金は決まった金利で運用されるため、将来の貯蓄額は明確になりますが、昨今の金利ではほぼ利息はつかないうえ、運用益が非課税という利点も活かせません。
資産の変動に慣れないうちは、低リスクの債券の割合を多くするのも手。運用商品を変更するには、先ほどのY.Kさんの相談への回答でお話したように、「スイッチング」と「配分変更」という方法があります。