オールジェンダートイレを設置する動きが広がっている。2025年に大阪市で開かれる大阪・関西万博の会場でも検討が進んでいるという
オールジェンダートイレを設置する動きが広がっている。2025年に大阪市で開かれる大阪・関西万博の会場でも検討が進んでいるという
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 トイレ先進国の日本で、オールジェンダートイレを巡る議論が混迷している。戸惑いの声があがる一方で、導入に成功したケースもある。考えるべき快適さとは何か。AERA 2023年6月26日号から。

【写真】国際基督教大学では1~3階の中央部がオールジェンダートイレになった

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 オールジェンダートイレとは、その名の通り、性別にかかわらず誰もが利用できるトイレのことだ。今年4月にオープンした東急歌舞伎町タワーでは、2階と5階にある公共トイレのうち、2階部分にオールジェンダートイレを導入した。

 トイレは2方向に分かれ、一方が男性用小便器スペース、もう一方が男女共用の個室スペースになっている。個室スペースには13基の個室トイレが並び、当初は2基が女性用、2基が男性用、8基がオールジェンダー、1基が多目的とされた。入り口や手洗い場は共用だ。だが、このトイレは開設当初からSNSなどで激しい反発を呼んだ。

「女性にとって危険で不安」「性犯罪が起こる」「隣に男性がいると化粧直しもできない」──。一方、男性からも「女性と鉢合わせるとなんだか気まずい」「悪いことをしているような気になる」などの声があった。

■反発は想像以上だった

 オールジェンダートイレは主に、身体的性と性自認が異なるトランスジェンダーや、性自認が男女に当てはまらないノンバイナリーの人にも使いやすいという趣旨で設置される。男女別トイレを利用しにくかったり、選択する精神的負担を強いられたりしてきた人たちだ。東急歌舞伎町タワーでも「国連の持続可能な開発目標(SDGs)の理念でもある『誰一人取り残さない』ことに配慮し、新宿歌舞伎町の多様性を認容する街づくりから、設置導入」したという。

 これまでもオールジェンダーを謳ったトイレはあった。ただ、いわゆる「誰でもトイレ」をそう名付けたり、ごく狭いトイレスペースをユニセックスとしたりする例が多かった。今回のように一定以上の広さのトイレに同じ入り口から入室し、手洗いスペースなど空間や個室を共用するケースは、国内では珍しい。

 だが、東急歌舞伎町タワーへの反発は想像以上だったようだ。タワーでは警備員を立哨させるなどの対策に加え、女性用個室の前に大きなパーティションを設置して物理的に空間を分ける対策を取った。具体的な内容は明言しなかったが、「今後改修工事を実施する予定」という。

 公共トイレの設計を多く手掛ける設計事務所ゴンドラの代表で日本トイレ協会会長の小林純子さんは、オールジェンダートイレへの反発についてこう語る。

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