ポッドモア/イギリス出身のシェフが切り盛りするここは、昼間はブレックファスト&ブランチ、夕方以降はカクテルと共に気のきいたつまみが楽しめるカクテル・バー。バタービスケットでハーブがきいたチキンをサンドし、トリュフ・グレービーソースで食べるひと皿は僕のお気に入り(撮影/ショーン・モリス)
ポッドモア/イギリス出身のシェフが切り盛りするここは、昼間はブレックファスト&ブランチ、夕方以降はカクテルと共に気のきいたつまみが楽しめるカクテル・バー。バタービスケットでハーブがきいたチキンをサンドし、トリュフ・グレービーソースで食べるひと皿は僕のお気に入り(撮影/ショーン・モリス)
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 長く控えていた海外旅行を楽しみたい人も多いだろう。ハワイを知り尽くす美食家が最新のレストラン事情を紹介する。AERA 2023年6月19日号より紹介する。

【写真】ショーン・モリスさんが必ずオーダーする「ガーリックステアフライプラウン」

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Sean Morris/ハワイ・ホノルル生まれ&育ちのフードライター。ハワイ、アメリカの雑誌、ウェブで執筆。美食家としても知られる(撮影/赤澤かおり)
Sean Morris/ハワイ・ホノルル生まれ&育ちのフードライター。ハワイ、アメリカの雑誌、ウェブで執筆。美食家としても知られる(撮影/赤澤かおり)

 苦しいコロナ禍を経て、ハワイのレストランが進化を遂げている。ハワイきっての美食家で『ハワイローカルグルメ完全ガイド』(朝日新聞出版)の著者、ショーン・モリスさんに最新レストラン事情を聞いた。

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 2020年、世界はパンデミックに襲われた。3月下旬にはホテルやレストランはシャットダウン。前年1千万人を超えたハワイへの観光客は途絶え、地元住民たちも外食することがなくなり、お店はしばし閉店。それに伴い従業員たちは一時解雇。ホテルも同様だった。

 しばらくするとレストランはテイクアウトのみというスタイルで稼働し始めた。20年秋にはワード地区にあるレストラン「シェフ・チャイ」が、1週間分のテイクアウトメニューを提案。そのつどオーダーしていたテイクアウトを、1週間分まとめて購入できるようになった。

■愛すべき店が次々閉店

 これまでレストランでの食事は値段の関係から難しかった地元住民たちも、高級レストランの味がテイクアウトで20~35ドルほどの値段で食べられるとあって、このスタイルはすぐ大人気になった。

 ただその間も、解雇や一時解雇を余儀なくされた人たちは増え続け、ハワイから出ていく人、レストラン業界から手を引く人も増えていった。若者たちは手っ取り早くお金が稼げる仕事へ移行していった。特にユーチューバーになった人は多かった。キッチンスタッフは不足し、おもてなしに手がまわらないレストランは営業時間の短縮や休業日を増やして対応した。

 閉店を余儀なくされたところもたくさんあったし、早めに引退をするシェフも少なくなかった。ハワイ独自の料理スタイル、ハワイ・リージョナル・キュイジーヌの代表格で老舗の「アラン・ウォンズ」や、ハワイでフレンチを広めた「シェフ・マブロ」、老舗のドライブイン「リケリケ・ドライブイン」の閉店には僕も声を失った。愛すべきレストランが次々閉店していく様はこの世の終わりのような気持ちになった。先の見えない不安で押しつぶされそうになった人も多かったと思うが、この時期、精神的にも経営の面でも強くなったレストランは少なくない。

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