商品やサービスに対して過剰な要求をしたり、不当な言いがかりをつけたりする「カスハラ」。規制するための法整備が急務だ※写真はイメージ(gettyimages)
商品やサービスに対して過剰な要求をしたり、不当な言いがかりをつけたりする「カスハラ」。規制するための法整備が急務だ※写真はイメージ(gettyimages)
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 客が従業員に対して理不尽な要求をしたり、不当な言いがかりをつけたりする悪質なクレーム行為が横行している。AERA 2023年6月19日号より紹介する。

【図表】「ストーカー型」カスハラ五つの要素はこちら

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「もう店に行かないからな!」

 61歳の男はそう怒鳴った翌日に刺傷事件を起こし、現行犯逮捕された。

 朝の通学時間帯。東京都大田区で5月、中学1年生の男子生徒が刺される事件が起きた。子どもを狙った通り魔的犯行と思われたが、男は被害生徒の父親が働く家電量販店の常連客だったという。

 男は高額な買い物をして以降、頻繁に店を訪れるようになった。その度、父親に過剰な接客を要求。横柄な態度を取ることもあったと報じられている。

 事件の詳細が明らかになると、インターネットでは「カスハラ」を指摘する声が相次いだ。カスタマーハラスメントとは、商品やサービスに対して過剰な要求をしたり、不当な言いがかりをつけたりする悪質なクレーム行為を意味する。

 今回の事件の発端は、カスハラなのだろうか。

■共通点は「繰り返し」

「ひとごとではないと怖くなりました」

 そう打ち明けるのは、都内の飲食店で働く20代の男性スタッフ。この半年ほど、一人の男性客に頭を悩ませているという。

「ほとんど毎日店に来てくれるありがたいお客さんなのですが、店が混んで接客ができないと機嫌を損ねてしまう。何かされたわけではないけれど、事件を知ったときその人の顔が浮かびました」

 カスハラと刺傷事件。遠い存在に思えるが、共通点がある。

 犯罪心理学が専門でカスハラ問題にも詳しい東洋大学の桐生正幸教授はこう指摘する。

「今回の事件はストーカー要素もうかがえるものですが、特定の人に向けて同じ行為を繰り返すという意味で、ストーキングとカスハラの行動形態は親和性が高いといえます」

 桐生教授によれば、カスハラには主に三つのタイプがある。一つは、執拗なクレームを繰り返すが、話し合うことで落ち着くタイプ。もう一つは、土下座を強要するなどの犯罪タイプ。

 だが、どちらにも属さない「グレーゾーン」タイプがあり、ここに穴があるという。桐生教授は言う。

「延々と自分の主張を繰り返し、なぜ怒っているのかがわからない。企業も対応の仕方がわからず、見て見ぬふりをしてきた。それが、極端なカスハラの横行につながっています」

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