■出勤日をサイトで把握
毎日店に来てくれる。たくさんの商品を買ってくれる。一見すると「良き常連客」だが、なぜか急に不機嫌になったり、用もないのに店を訪れたり。暴力や暴言があればカスハラとして対応できるが、曖昧さゆえに身動きがとれず、気づかぬうちに従業員の心がすり減っていく。
「だからこそ、ストーカー規制法などでカスハラを取り締まることが望ましい」
と桐生教授は言う。だが、現行の法律では恋愛感情以外の目的によるつきまといは規制の対象外のため、企業や個人の対応に委ねられているのが現状だ。
美容師として働く女性(27)もカスハラで「怖い思い」をしたことがある。
「新規開店したサロンのチラシを渡した男性が後日来店してくれました。そのときは普通のお客さんだと思ったのですが、なぜかそれ以来、勤務後に店の前で遭遇するようになったんです」
近くに住んでいるわけでも、働いているわけでもない。不思議に思っていたが、後日、美容院の予約サイトで女性の出勤日を把握していたことを知った。
「そのお店はやめてしまったので、今その人がどうしているかはわかりません。美容室は一対一で長時間会話することも多く、お客さまとの距離も近くなる。何度も店に電話をかけてくる人もいるので、そういうときは別のスタッフが対応するなどの対策をとっています」
(編集部・福井しほ)
※AERA 2023年6月19日号より抜粋