作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストとして活躍するジェーン・スーさんによるAERA連載「ジェーン・スーの先日、お目に掛かりまして」をお届けします。
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「私の記憶が確かならば」という名台詞が生まれたのはフジテレビの名作番組「カノッサの屈辱」だったか「料理の鉄人」だったか。鹿賀丈史さんの記憶があるから「料理の鉄人」だったのでしょう。
もとい。私の記憶が確かならば、およそ5年ぶりにテレビの地上波番組に出ました。先日のNHK「インタビューここから」の話ではありません。なんと、もうひとつ出演したのです。人生初の生放送、NHKの「あさイチ」! 観てくださった方、ありがとうございました。
くり返しになりますが、私はテレビ出演が苦手です。ラジオにはスッとなじめたものの、テレビにはなかなか。苦手なことをやらない理由はいくつでも挙げられると相場が決まっています。だから今回は、「じゃあ、なんで出たのよ?」を語りたい。
おかげさまで、ラジオやポッドキャストでしゃべる仕事も、書く仕事も十分にいただいています。スタッフにも恵まれ、大事にしてもらっています。まるで我が家のようにくつろいでいると言っても過言ではありません。
ということは、チャレンジングな仕事はあっても、慌てふためいて冷や汗をかくことはなくなったってこと。つまり、新しい自分にも出会えないってこと。
だから、いま一度苦手と向き合おうと思ったのです。20代はなんでもチャレンジ、30代前半は食わず嫌いをやめ、30代半ばからは「好きなことより得意なこと」を。40代もそうやって過ごし、50代に入りました。やるか、苦手。
別の言い方をするならば、うまくできなかったとしても、立ち直れないようなダメージは受けなくなったということ。
結果、どこを見てよいかわからずキョロキョロしながらも、鈴木奈穂子アナウンサーや博多華丸・大吉さんのサポート、そして担当ディレクターさんを始めとするスタッフの細やかな配慮のおかげで、約1時間半の生出演を楽しく過ごせました。
またしても、ラジオリスナーや読者のみなさんは、自分の親戚がテレビに出演したときのように喜んでくれました。普段からこんなに温かく迎えられていたとは、テレビに出演しなければ、気づけませんでした。
きゅうりや納豆のように苦手克服とまではいきませんでしたが、素晴らしい経験になりました。苦手にトライ、またいつか!
○じぇーん・すー◆1973年、東京生まれ。日本人。作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニスト。著書多数。『揉まれて、ゆるんで、癒されて 今夜もカネで解決だ』(朝日文庫)が発売中
※AERA 2023年6月19日号