週刊朝日最終号は売り切れ店が続出。朝日新聞出版は二度重版をした。
週刊朝日最終号は売り切れ店が続出。朝日新聞出版は二度重版をした。

 この記事を担当したデスクや編集長も「トップが悪い」とは思っていないだろう。ことはそれほど単純ではない。しかし、著者がそれを言いたいのであれば、尊重する。それが編集だし、そうしたルールが貫徹しているメディアは繁栄する。

 この吉永さんのコメントに、朝日新聞社員の中には、SNSで「そうです。トップが悪い」と尻馬に乗って社外に発信していた人がいたが、これも感心しない。

 週刊朝日の記者や編集者、幹部のように、社の機構のなかで、岩盤をくり抜くようにして、自分たちの意見を通していくことが、いかに大変なことか。道はそうすることでしか開けない。

 私は、「なぜ週刊朝日が休刊せねばならなかったのか」については、101人の最後にコメントをよせていた山口一臣元週刊朝日編集長の意見とほぼ同じだ。紙の雑誌とインターネットの無料媒体の時代は、2010年代に終わっていたのだと考えている。

 では有料デジタルのモデルで成功するためにはどうしたら良いのか。

 そのひとつには、今回最後に週刊朝日編集部がみせたような、編集者として著者の言いたいことをいかに拾い上げるかという姿勢があると思う。

 そして、今部数減にあえぐ新聞社や通信社の巨大メディアも、もう一度蘇生するとすれば、この編集者の目を持つことにしかないと考えている。

 デスクが、「どんなえらい先生の原稿でもそのままうちの社では出すことはない」とのたもうて、原稿を添削することにあるのではないことにははっきりしている。

下山進(しもやま・すすむ)/ノンフィクション作家・上智大学新聞学科非常勤講師。メディア業界の構造変化や興廃を、綿密な取材をもとに鮮やかに描き、メディアのあるべき姿について発信してきた。主な著書に『2050年のメディア』(文春文庫)など。

AERA 2023年6月19日号

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下山進

下山進

1993年コロンビア大学ジャーナリズム・スクール国際報道上級課程修了。文藝春秋で長くノンフィクションの編集者をつとめた。聖心女子大学現代教養学部非常勤講師。2018年より、慶應義塾大学総合政策学部特別招聘教授として「2050年のメディア」をテーマにした調査型の講座を開講、その調査の成果を翌年『2050年のメディア』(文藝春秋、2019年)として上梓した。著書に『アメリカ・ジャーナリズム』(丸善、1995年)、『勝負の分かれ目』(KADOKAWA、2002年)、『アルツハイマー征服』(KADOKAWA、2021年)、『2050年のジャーナリスト』(毎日新聞出版、2021年)。標準療法以降のがんの治療法の開発史『がん征服』(新潮社)が発売になった。元上智大新聞学科非常勤講師。

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