大学や大学院で「情報・データサイエンス畑」を歩み、起業家・研究者として活躍している琉球大学工学部教授の玉城絵美さん(39)が語るデータサイエンスの魅力と理系女子へのアドバイスとは――。AERA2023年6月5日号の特集「変わる大学・高校」から。
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10代の頃から先天性の心臓病で入退院を繰り返していました。そんな生活を送る中で、「ロボットの技術を使って自由に外出できないか」と考えたのが、琉球大学工学部情報工学科(現・工学科知能情報コース)を志望したきっかけです。これがのちに私たちが「ボディシェアリング」(重さや抵抗などの固有感覚を他者やロボットと共有する技術)と提唱する概念を生む原点になりました。
「ボディシェアリング」の技術を実現する上で基礎になるのはデータサイエンスです。データサイエンスによって得られた知見に基づいて、AIを構築する複雑系工学という分野の研究を進める必要がありました。これらを習得するのに私が選んだ学科はベストマッチでした。データサイエンスの知識を習得したおかげで、「ボディシェアリング」実現に必要となる生理学や心理学といった専門分野以外の知識の習得もスムーズでした。特に認知心理の分野は統計学が必須のため、すごく助かりました。また、ベンチャー企業の創業や運営に不可欠なマーケティングにおいても、データサイエンスの知識が非常に役に立っています。つまり、研究だけでなく、ビジネスにも活用できる学問なのです。
数学が苦手という人も諦めないでください。私も数学は「ちょっと好き」という程度でした。琉球大学教授になる前の4年間、早稲田大学人間科学部で「データリテラシー」の講義を担当しました。文系学生が多いこの学部で、数学を苦手とする学生がデータサイエンスの知識を習得していく様子を見て、データサイエンスを応用するスキルは文系理系を問わない、と実感しました。統計学はツールとして必須ですが、パソコンを扱えれば大丈夫というくらいの気持ちで臆さずトライしてください。