安藤サクラ、是枝裕和、永山瑛太(撮影/戸嶋日菜乃)
安藤サクラ、是枝裕和、永山瑛太(撮影/戸嶋日菜乃)
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 6月2日公開の是枝裕和監督の最新作「怪物」。物語は現代社会の問題をちりばめながらミステリアスな展開をみせる。主演の安藤サクラ、永山瑛太と是枝裕和監督が語り合った。AERA 2023年6月5日号から。

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――早織(安藤サクラ)は11歳の息子・湊(黒川想矢)と暮らすシングルマザー。最近、湊のスニーカーが片方なくなったり水筒から泥が出てきたり、少し不安なことが続いている。あるとき、湊が担任の保利(ほり)(永山瑛太)に心ない言葉を言われたと知った早織は、学校に被害を訴える──。

 映画「怪物」の脚本は是枝裕和監督が「最もリスペクトしている」という坂元裕二が担当。テレビドラマ「Mother」や「カルテット」など、エンターテインメントのなかに社会問題を織り込ませた作品でも知られる。

是枝裕和(以下、是枝):加害者遺族や赤ちゃんポスト、疑似家族など、自分と同じモチーフに関心を持たれている方だなと、坂元さんにはずっと親近感と羨望(せんぼう)を同時に感じていました。脚本作りに僕が途中から参加してすぐコロナ禍になったんです。コロナ禍でより顕著になったことは、いまの世の中が自分に理解できないものを「怪物」として、理解しようとせずに蓋をしてしまうということ。それが分断や断層を引き起こし、しかもその状況が世界的に広がっている。坂元さんは直接的にコロナを描かずに現在の社会の空気を表現した。「ああ、これが坂元さんの時代の読み方なんだ」と今更ながら畏敬の念を抱いています。

安藤サクラ(以下、安藤):私は自分が母親でもあるので、脚本を読んだとき、素直に母親の気持ちで読んでしまってすごく苦しくなったんです。その印象を「新鮮なまま覚えておこう」と現場に入ったのですが、できあがった作品を観たら、自分が想像していたものとは別次元でした。自分が出ていることも忘れて見入って大号泣して、腰が抜けました。

■見ている真実が違う

永山瑛太(以下、永山):僕は是枝さんとお仕事をするのは初めてでしたが、以前お会いしたときからなぜか「全部バレてるな」っていう感覚があるんです。「僕はこういう人間です」ということを言わなくてもわかられているというか。なので、「自分がこの役をどう感じるか」とかではなく、「保利だったらどう感じるか」をとにかく突き詰めて、保利に向き合おうと演じました。

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