「喜九家」の特製中華。鴨チャーシュー、豚チャーシュー、味玉、もみ海苔、ナルト、メンマ、三つ葉、ネギがのっている(筆者撮影)
「喜九家」の特製中華。鴨チャーシュー、豚チャーシュー、味玉、もみ海苔、ナルト、メンマ、三つ葉、ネギがのっている(筆者撮影)
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  日本に数多くあるラーメン店の中でも、屈指の名店と呼ばれる店がある。そんな名店と、その店主が愛する一杯を紹介する本連載。青梅・所沢エリアを牽引する名店の店主が愛する一杯は、大学時代からラーメン一筋の店主が日高市の名所「巾着田」のほとりで営む名店の珠玉のラーメンだった。

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■ラーメンには正解がないから常に怖さがある

 2011年に東京都青梅市で創業した「喜九家」(「喜」は「七」を三つ並べたもの。以下、店名の「喜」はすべて同じ)。和食出身の店主・大野喜久さんが弁当屋を営みながら始めた店だが、オープンから3年間は赤字という厳しい時期が続いた。徐々に口コミが広がり人気店となり、今では青梅の本店のほか、「喜九八~garage~」、「拉麺 イチバノナカ」、「喜りん食堂」、「喜九八~エキチカ~」と所沢市に4つの店を展開し、エリアをけん引する人気グループとなっている。

 2号店として16年にオープンしたのが「喜九八~garage~」だ。ここから、店員を女性で固めるというトライアルをスタート。本店も女性3人で切り盛りすることにし、大野さんは現場からは離れた。

「ラーメン業界は男性が多いけれど、働きたいと思う女性を応援したいと思ったんです。結果的に、今はほとんどの店舗を女性が占めています。5店舗になりましたが、経営視点でお店を増やしているということではなく、弟子志願者が来たらお店を増やすという流れにしています。各店の店長のキャラを立たせて、それぞれで独自のメニューを作ってもらう流れにしています」(大野さん)

「喜九家」店主の大野喜久さん。イタリアンや和食の経験もある(筆者撮影)
「喜九家」店主の大野喜久さん。イタリアンや和食の経験もある(筆者撮影)

「喜九家」の店舗は所沢エリアに集中しているため、“ドミナント経営”といわれることも多いが、実はそうではない。単純に大野さんが自宅の青梅から目の届く範囲内で展開したいというだけだという。「喜九家」は全店舗味が違いメニューも違う、いわゆるチェーン店のような展開ではないので、定期的に店舗ごとのチェックが必要になる。大野さんは毎週1週間かけて全店舗を巡回しているのだ。

「店を広げるにあたって大事なことはこだわりすぎないことです。こだわりがお客さまに伝わるか、それが一番大事なことです。お店のこだわりよりも、一般の人にわかるレベルのこだわりなのかを重視します。細かなこだわりよりも味がブレないことの方がよほど大事だと思います」(大野さん)

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自分がど真ん中だとは思っていません