自ら研究した漢字の法則について、ホワイトボードに書きながら解説する小林都央さん。疑問に思ったことや頭の中をよく書き出すという=東京都の自宅で
自ら研究した漢字の法則について、ホワイトボードに書きながら解説する小林都央さん。疑問に思ったことや頭の中をよく書き出すという=東京都の自宅で

ギフテッド」と呼ばれる特定分野で突出した才能を持つ人たち。並外れた能力を発揮する一方、学校の授業や生活が苦痛、社会人になっても居場所がないなど、生きづらさを抱えている。『ギフテッドの光と影』(朝日新聞出版)の著者が、ギフテッドの人たちの苦悩に迫った。AERA 2023年5月29日号の記事を紹介する。

【写真】フォトグラファーの仕事のかたわら、小さなバーでギフテッド向けのサロンを開く立花奈央子さん

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 東京都内に住む小学6年の小林都央さん(11)は小4で英検準1級(大学中級程度)、小5で漢字検定2級(高校卒業程度)に合格し、英語と日本語を操るバイリンガル。IQ(知能指数)は平均とされる100を大きく上回る154だ。都央さんのように特定の分野で並外れた才能のある人のことを「ギフテッド」という。

 幼稚園のころには分子に興味を持ち、すべての元素を英語と日本語で暗記した。同じころパソコンに触れ始めた都央さんは、元素クイズを自動で出すゲームのプログラムを自作して遊んだ。

 人口の上位2%のIQを持つ人たちが参加する「JAPAN MENSA」の会員に小学2年で認定された。複数のプログラミング大会で特別賞などを受賞。住んでいる地元の教育委員会からは、映像コンテストやギフテッド向けのプログラムで優秀な成績を収めたとして、2年連続で表彰を受けた。世界屈指の医学部を有し、最難関大のひとつであるアメリカのジョンズ・ホプキンス大学のギフテッド向けプログラムでは最優秀の成績を収めた。

 都央さんの経歴には、こうした数々のきらびやかな業績が並ぶ。一方で、幼いころから集団での生活にストレスを感じ、適応に苦しんできた。ざわざわしている教室にいると落ち着かない。指示された通りに動かないと怒られる学校は都央さんにとって「つらい場所」となった。教室では自分を押し殺し、時計をじっと見て時が過ぎるのを待っている。学校に長い時間いると、顔がこわばり、泣いて帰ってきたこともあった。現在は週に2日ほど登校する。

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