小学生時代、学校の授業はとても退屈に感じ、教科書をひととおり読めばだいたい理解できた。先生からは「態度が悪い」と叱られたことを覚えている。学年が上がるごとに、退屈な授業や学校生活を、苦痛に感じるようになっていった。

 勉強はしなくても、テストはいつも満点。通知表は、体育以外はすべて「◎」。その代わり、同級生とは話が合わなかった。勉強していないのにできるからだろうか、いつの間にか嫌われていたという。

「無視されたり、工作でつくった作品を隠されたりしましたね。遠足の班分けは、いつも自分だけ最後まで残っていました。だんだん、自分が悪いことをしているからいじめられるのだと思うようになっていきました」(立花さん)

 高校を卒業し、社会人になっても居場所は見つけられなかった。自分の好きなことをしても否定され、周りの視線や雰囲気に合わせて仕事をする日々が繰り返された。19歳の時、立花さんは心を病んで休職した。「うつ病」「解離性遁走(とんそう)」と診断された。突然どこか遠くへ行ってしまい、気がつくと自分がなぜそこにいるのかわからないことが続いた。

「このままではだめになる。徹底的に治さなければ」と、精神科病院の閉鎖病棟に自ら望んで入った。約3カ月間すごし、自分の気持ちに向き合おうと決めた。仕事を辞め、たどり着いたのが女装専門のフォトグラファーだった。

 36歳のころ、発達障害を疑って、知能検査を受けたところ、全般的なIQが平均を大きく超える137だった。そこからギフテッドに関する専門書を片っ端から読んでみた。

 すると、書かれていた特徴がいちいち自分に当てはまった。他人に合わせ、ずっと生きづらさを抱えてきた。本当の自分は何なのかと思ってきた疑問が、ようやく解けた気がした。「パズルのピースがはまるような感覚だった」という。

「私は、自分のことを『天才』とは思いません。ただIQが高いという個性があるのだということがわかりました。そのせいで、これまで息苦しさや孤独を抱えていたのだと理解できて本当に良かったです」(立花さん)

(朝日新聞社・阿部朋美、伊藤和行)

AERA 2023年5月29日号より抜粋

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