AERA 2023年5月29日号より
AERA 2023年5月29日号より

■気候の問題も

 5月、6月の時期に心の調子を崩す。そこには「気候の問題」も影響していると指摘するのは、「気象病」にくわしい愛知医科大学疼痛医学講座客員教授の佐藤純さんだ。

「春先特有の寒暖差や気圧のアップダウンの激しさです。とくに今年は急に7月並みの暑さになったり、1週間寒い日が続いたり、変化が例年よりも大きい。脳の機能や体温維持など重要な機能を司る自律神経に、より負担をかけ、精神的な不調にもつながっていると言えます。心と体が整わない状況のうちに梅雨に突入する負の連鎖も起きる。結果的にうつ病まで進んでしまうこともあり得ます」

 もう梅雨は間近。文字通り鬱々とした季節になる。

「梅雨で日照時間が少なくなると睡眠を誘導するメラトニンの材料であるセロトニンが作られにくくなり睡眠障害が出たり、高湿度で汗をかきにくくなり、体内に熱がこもりやすくなって清涼感が得られないなど、様々なことが複合的に作用して精神的な不調につながるんです」

■冬型から夏型に

 私たちの体はこの時期に、自律神経のバランスを交感神経優位へ、つまり「冬型の体から夏型の体へ」と切り替えていく必要がある。しかし不規則な気象の過程では、心身に疲労感が出てきてしまうと、佐藤さんは言う。

「対策としては、夏モードの体への切り替えを、できるだけ早く始めること。ポイントは、体から熱を放出する力をどうやって早く作るか、です」

 佐藤さんのおすすめは、毎日少しだけでも汗をかく運動やストレッチを行い、お風呂にも少し長めに入るなどの工夫を2週間ほど続けること。汗を出しやすくして、バテない体にすることが基本だという。

「加えて十分な睡眠、そしてたんぱく質やビタミンB6が豊富な食事をきちんととる。そうすれば夏に向けての精神疾患対策にもなると思います」

(編集部・小長光哲郎)

AERA 2023年5月29日号より抜粋

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