林:だけど、映画とかドラマのプロモーションで、取材日というのがあって、メディアが1カ所に集められて、それこそ分刻みで順番にインタビューして、その中に私たちの対談も組み入れられることがあるじゃない。
阿川:ある、ある。
林:廊下で順番を待たされたりして。
阿川:日本で公開される映画のプロモーションで、ハリウッド女優のフェイ・ダナウェイさんに会ったの。でも、約束の時間がくるくる変わるのよ。当日になっても5分刻みで変わって、ようやく私たちの番になって部屋に入ったら、彼女、すごく横柄で。映画の話がひと通り終わって、小さいころの話を二つ三つ聞いたら、「はい、過去の話はこれでおしまい」って。
林:まあ。
阿川:そしたら、私の前に置いてあった時計を見て、「その時計いいわね」って言うの。「あげませんよ」と答えときました(笑)。で、まもなく「インタビューはこれでおしまい」って、30分いかないくらいで切り上げられちゃった。記事にならないからボツにしましたけど。
林:私もリチャード・ギアさんに映画のプロモーションで会ったけど、映画の話はすぐ終わっちゃって、「チベットの話をしようぜ」とか言ってチベットの話を始めて、でも、「私の83歳の姑があなたのファンです」と言ったら、喜んでプログラムにサインしてくれたの。それを姑に持っていったら、仏壇に置いて「私が死んだら棺桶に入れてね」って言うぐらい喜んでた。
阿川:いい人ねえ(笑)。初対面の人にインタビューするっていうのは得意ですか?
林:楽しい。会う前は緊張するけど、「こんな人なんだ。おもしろいな」と思ったり、私の知らない世界を教えてくれたりするとすごく楽しい。
阿川:私も会う前は「そんなにおもしろい人?」「コワそうじゃない?」とか思ってビビるんだけど、会っちゃうと、なんておもしろい人なんだ、と思うことのほうが圧倒的に多い。やっぱり世の中にある程度名前が知られてる人って、いいも悪いもパワーがありますよね。